コイノウタ (ページ36)

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何かここだく我が恋ひわたるページ36

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「はぁ…」

「えらい大きい溜息やなぁ」

劇場の楽屋の片隅。

「え、」

珍しく大人しくソファに座ってスマホをいじる盛山さんの言葉で、自分が今溜息をついた事に気づいた。

「えって何？」

「溜息ついてました？」

「自覚なしはやばいな」

私が溜息をついた理由は、、、

◇

「Aってさ、」

「はい」

ビールのジョッキを揺らしながら、言葉を選んでるような様子のリリーさんとは最近2人でよくご飯するけど初めて見る表情…

「河野のこと好き、やろ」

「ゴホッ…な、何を突然、、」

「どうなん？」

何を言われるかと思えば想定外の質問に、サワーを吹き出しそうになった

「先輩、として好きですよ」

「…ほんまの事言うて」

「…聞いてどうするんですか」

「好きやから、困るんよね」

「はい？」

私が酔っ払って理解出来ていないだけなのか
リリーさんが訳分からないこと言ってるのか

何も言わないでいると、私の目を捉える。

「河野は既婚者やからあかんよ」

当たり前な事を言われてるのに

「好きな気持ちを持つくらいいいじゃないですか」

思わずムッとなってしまった。

不倫する人もこんな風におちていくのかな、、じゃなくて私、、今、好きって言った…

「あかん。Aには俺のことを好きになって貰わんと困る」

俺の方が河野より魅力的やと思うで？と悪戯な笑みを浮かべるリリーさんを最後に記憶があやふや。

◇

「恋ってなんで上手くいかないんですかね…」

盛山さんは立ち上がって私の頭をポンとして

「煙草吸うてこよ」と楽屋を出て行く。

「Aこれ好きちゃうかった？」

盛山さんの変わりに、私の好きなカフェオレを持ったリリーさんが横に座る。

「あ、あの、」

「ん？どうした？」

質問に答えてないのに何も言わずに聞いてくれる。

「私、諦めます。諦めて、リリーさん、のこと、」

そこまで言った時、河野さんの楽しそうに話している姿が目に入ってきて言葉がとまった。

「わっ、」

突然目の前が真っ暗になって驚くと耳元で

「絶対に幸せにしたるから」

とリリーさんの優しい声がした。

どれだけ想っても河野さんは振り向いてくれない。

分かってるのに

顔を見ると気持ちが溢れる…

リリーさんはそれに気付いて私の目を覆ったんですよね？

そんな優しいリリーさんの気持ちに応えられる日は案外、遠くないかもしれない

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