コイノウタ (ページ13)

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夏の野の茂みに咲ける姫百合のページ13

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番組の打ち上げ中。
芸人とスタッフさんがあちこちで盛り上がってる。

「A顔色悪ない？」

ビールの半分入ったジョッキを持ったリリーさんが前に座って私の顔を覗き込む。

「そう、ですか？」

実をいうと女の子の日
しかもよりによって1番重くて怠い2日目。

「いつもより青白いで？」

「ライトのせいじゃないですか？」

「こういう店だいたいオレンジやから」

体調悪いん？と聞くリリーさんに

「ちょっと、、」

とだけ伝えると、少し考えたような表情をして

「これ羽織っとき」

自分の着ていたカーディガンを脱いで差し出された。

「でも、、」

「身体冷やしたらあかんから」

ほら、とテーブル越しに押し付けてくるカーディガンを受け取って羽織るとリリーさんの香りに包まれる。

そこまで見たリリーさんは立ち上がって個室を出て行き、ひとりになった。

どちらかと言うと、私は目立つ方じゃない。

実際に相方の方が色んな番組にひとりでお呼ばれすることが多い。いわゆる、じゃない方。

人と話すことも苦手で、、じゃあなんで芸人になったんだ、って感じだけど。

リリーさんとだって舞台上は疎か楽屋でも挨拶程度しか絡んだことないのに

私の顔色が違うと分かるまで見て下さっているリリーさんに驚きつつ、モテる男は違うなと感心した。

「わっ何っ？！」

突然目の前に白いもやが現れて驚く。

「ごめん、驚かすつもりはなかってんけど。可愛いもん見れたわ」

にやにやしながらリリーさんが隣に座った。

「本当にびっくりしたんですよ！」

「ごめんごめん。これ飲み」

渡された白いカップから芳ばしい、いい香りが漂う

「ジャスミンティー？」

「お酒飲むよりこっちのがええやろ」

お手洗いに立ったかと思ってたけど、わざわざ…

「私のため、に？」

「あったまるで」

微笑むリリーさんに思わずときめく。

こんな、茂みの中にひっそりと咲いた小さい名もない花のような私にも優しいリリーさんのこと、

好きにならない方がおかしいと思う。

「ありがとうございます」

「抜け出そか」

「合コンと違いますよ先輩…」

「いや、真面目に。えらいやろ、さっきからずっとお腹と腰交互に摩っとるし」

「あ、いや、」

「Aは毎月ちょっとしんどそうやけど周期的に安定しとるよな」

「え」

色々と撤回したい。
この人はちょっとやばい人かも知れない…

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