第六章19_小刻みの音 ページ20
一度切り始めたら、迷いや躊躇いなどは吹っ飛んだようだ。
一言も話さず、髪の毛を着る事に集中している。
慎重な手つきで丁寧にハサミが入れられていく。
さく、さく__と、音が響くたびに、耳がくすぐったいような感覚に襲われたが、動いてはいけない気がして、我慢した。
雑に切り落とした影響で、所々微妙に伸びたり、短かったりした毛先は彼の手によって綺麗に整えられていく。
それを視界ではなく音で感じつつ、新しくなった髪型を見た人たちの反応を思い浮かべていた。
エース君、デュース君は驚くだろうな。
エペル君とカリム先輩も、驚いた後…似合ってるな、とか言ってくれそう。
ジャミル先輩は……分からない。ただ、ヴィル先輩がしたと聞いたら、手先が器用だと褒めるだろう。
・・ルーク先輩はまぁ、「ボーテ!」とか言うんだろうなぁ。
……グリムは、そんなに驚かないのかも。
「髪の毛短くなったからってなんだよ。オレ様の方が短いゾー」とか…妙な対抗心を沸かす気がした。
ふと、小刻みな音がピタッと止まった。
ヴィル「…………いいわよ」
スゥと吐息の後に、ヴィル先輩はようやく声を発した。
瞼を開き、談話室の壁にかけていた時計を見ると、30分くらいしか経っていなかった。
体感的に1時間位立っていたと思っていたけど、こんなに早く済んだんだ。
ヴィル「…うん。まぁ上出来かしら」
そう言って彼が笑う。
その顔からは張りつめたものが消えていた。
私は鏡に映る自分をまじまじと見つめた。
この世界に来たばかりの時も、中々短かったが…今回はそれよりも短くなった。
一番短い束に合わせたのだろう、肩よりもずっと上に髪が短くなっていた。
ベリーショート…とはいかないが、短い。
ヴィル「…どう?切り過ぎたからと言って、戻すことは出来ないけど」
『短くなったなぁーって感じですね』
ヴィル「そりゃ切ったからでしょ。一番短かった束に合わせたの。そうじゃないとバランス的におかしくなるから」
私の答えを聞いた彼は急に不安そうな表情を浮かべ、鏡越しに見つめてきた。
ヴィル「気に食わない?」
『いえ見慣れないだけで…でも、サッパリしたし、これはこれで好きです』
ヴィル「そう」
ほっとしたように笑みを浮かべているヴィル先輩。
バサッとカットクロスを服の上からどかし、髪の毛を全体触っている。
これは確か、合宿中に渡してきたヘアオイルの匂いだ。
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ナギサ(プロフ) - あ"〜……本当に主様やってくれますね。自分好きな言葉をいつもいつも小説に組み込んでくれている…超能力者ですか??? (11月25日 16時) (レス) @page21 id: f18589988d (このIDを非表示/違反報告)
ALICE(プロフ) - ふわなさん» お返事おくれてしまい申し訳ありません!誤字がちょびちょび目立ってしまいますが、楽しんでいただけたら嬉しいです!一時期更新停止いたしますが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年11月18日 23時) (レス) id: 3b90083b4f (このIDを非表示/違反報告)
ALICE(プロフ) - ふわなさん» お返事おくれてしまい申し訳ありません!誤字がちょびちょび目立ってしまいますが、楽しんでいただけたら嬉しいです!一時期更新停止いたしますが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします! (2021年11月18日 23時) (レス) id: 3b90083b4f (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 初コメ失礼します!素敵な作品に合うことができました・・・!お話もかなり続いていてすごいです!文もなんだか頭に入りやすくて!大きな誤字も無いので少しの誤字なら大丈夫ですよ!応援しています!好きなアニメの要素があって好きです!頑張ってください!! (2021年11月2日 18時) (レス) @page40 id: 7054f2498a (このIDを非表示/違反報告)
ALICE(プロフ) - モモカ🌼さん» ありがとうございます!かなり長いシリーズですのに、それを毎日見て頂けてとても光栄です!今後とも更新頑張りますのでよろしくお願いいたします! (2021年10月13日 21時) (レス) id: 3b90083b4f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ALICE | 作成日時:2021年9月24日 16時