イルミナント

F92 #4 ページ10

「どけて。」

「どけるわけないだろ。」



もう片方の腕を伸ばそうとしたその時、左手に痛みが走った。



「いっ……！」



大丈夫、こんくらい、もっと痛いのに耐えてきたじゃないか……。


前のめりになった体を無理やり起こされた。



あっ、これまずい……これ、経験上、この体勢は…………
これ、殴られる。



体が動かない。
頭の中で、確実にまずいとサイレンが鳴っているのに体は全く動かない。




「親いねぇくせにさぁ、イキんなよ光。」



目の前のそいつが言う。
その時、教室のドアが開いた。






「にげよ。」




ヒリヒリと痛む左手を掴まれた。

突然のことにポカンとしてしまう。




「えっ……」

「早くっ、にげよ。」



片手で僕の手を、もう片方の手であいつらの足元に転がった筆箱を。



そのまま僕の手を引いたのは慧くんだった。
連れられるままに教室から抜け出る。

後ろで何か叫んでいるのが聞こえるけど、わからない。
上履きの音がたくさん聞こえるけど、しらない。



そのまま下駄箱まで走って、着いた頃には額から汗が滲んでいた。

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