イルミナント

F93 #5 ページ5

一人で生きるんだ、って。思ってた。

どうせ捨てられるなら、一人で生きようと思った。


なのに、無理だった。



「慧くん？慧くん大丈夫？」



ふとはっきりした意識。
視界には施設の職員。



「よかった。もうちょっとこれ飲んでね。」



こちらに向けられるストローにまた口をつける。
少し吸えば、甘じょっぱい飲み物が口を満たす。
ちょっとぬるい。



「多分脱水だね。ごめんね、気づけなくて。」



目の前のそいつは困ったように言った。

だっすい……脱水…。

ご飯、食べなかったからだろうか。



環境が変わったせいか、それとも俺の心の奥の方が拒絶しているからか。
食べ物が喉を通らなかった。



「あとはゆっくり休んでね。もし困ったことがあれば光に言ってくれればいいから。」

「大丈夫？」



職員と、同室の光が覗き込んでくる。
そうか、ここは光のベッドか。



僕は、結局一人で生きていくことすらできないのか。



いやだ、そんなのいやだ。
俺は、一人で生きていくんだ。



顔を背けて背を向ける。

「よろしくな、光」と声が聞こえて、少し遅れてドアが閉まる音がした。



「今日、上で寝るね。」



小さい声が背中にぶつかった。

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