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繭中の蚕【紫】 ページ37

ーー…汗を



「…A?」




全身で掻いていた


起き上がると 爪が掌に食い込み


息が、



切れーー…




「…また悪夢か」



「ん…っ、ごめ…、」



隣で寝ていた彼が起き上がり私の背中を撫でる


私はその肩に頭を預けて必死に息を整える



もう、こんな夜が幾日も続いていたーー…




…忠義の夢を見るのは初めてだった



“ごめん”


“いつかまた会いたい”


“友達としてでええから”



…あの日の忠義はただ、我を失っていただけで


きっともう、私のよく知るあの忠義に戻っていると信じているのに…




ーー…たとえ世界中を敵に回したとしても。


誓ったところで


実際、久しぶりにできた友人さえ失い



…この世のどこかに自分に悪意を持つ人間がいる


その動かし難い事実は確実に


私の神経をすり減らし続けていた



“俺らを差し置いてお前に幸せになる権利があるんか?”


夢の中の彼の言葉は全て私が私に向けた言葉だった



あの白紙の手紙と同じ


…自分の中の疾しさが

毎晩 誰かの姿を借りて現れるーー…




「…短時間型の眠剤やと途中で脳が覚醒してまうんやと思うわ」


「ん…ごめんね いつも…」



…私が飛び起きるといつも信ちゃんは瞬時に気配を察する


…ああ、ずっと彼のことも緊張状態に置いているんだなと思う


耳を寄せた肩から伝わる彼の心臓の音を聞く


本当は、よく食べてよく寝て

健康そのものの人なのに


この数日、彼の睡眠すら邪魔しているーー…



「…薬変えてみるか」



「…」



「とりあえずこれ舌の下 置いてみ、即効性あるから」


「ん…」



彼の指先が私の唇に触れ

私は与えられるままに舌を差し出すーー…


人差し指が私の咥内にぬるりと入り込み


溶け出す



甘いーー…




「…信ちゃん」



「…どうした」



「…お願い、して…」



「ん…」




彼の頭が私の首に埋もれる

私は髪を抱いて必死に溺れる



白い糸が


少しずつ私を包み込んでいくようだった


絹を吐き出す蚕のように…


この甘さが全てを曖昧な繭に包んでくれることを祈る…




彼の舌が私を這う


桑の葉を食むように



部屋中を


幾千もの白い糸が包んでいくのが私には見えるーー…




「あっ…、信ちゃ…、」



「ん…」




…三日前に新しい年を迎えたばかり


一緒に初詣をして



神様に“彼だけは奪わないで”と願った私は、もう



彼と薬なしでは眠ることすらできない人間になっていたーー…

傍観者の告白→←断罪の振り子【緑】



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たまご(プロフ) - okmrernさん» あ、なんか途中で送信しちゃったごめんなさい…!引き続きよろしくお願いします! (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - okmrernさん» okmrernさま、お久しぶりですありがとうございます!ここまでされても私はこの村上信五とつきあいたい (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ブルームーンさん» ブルームーンさま、お久しぶりですありがとうございます!ラスボスは一番そばにいるということでひとつ…! (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ぐふ。さん» ぐふ。さま、初めてのコメントうれしいですー!!信五最強説です…!そしてビリヤード!素敵ですねそれ…ただ友達がいる設定にしてしまったなあの店員さん…… (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - ゆき姉さん» ゆきえさん!コメントありがとうございます嬉しい!ほんとしんどい話でごめんなさいね…いつもありがとうございます! (2020年6月2日 17時) (レス) id: 8c4f156e76 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2019年8月18日 23時

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