僕の愛した女の子【Side青】 ページ5
……僕にとって「A」という名前の女の子は、ひとりしかおらんかった。
半年前、僕が夢中になった女の子。
そして、僕の大事なメンバーと、不器用な愛で結ばれた女の子。
すっかり立ち直ったつもりやったけど、不意にあの白い肌を、聡明な横顔を、震える肩を、そして柔らかな笑みを思い出し、僕は若干の未練を指摘されたみたいな気がして、理不尽にもちょっとイラだつ。
なんや、全然Aちゃんとちゃうやん。
僕の知ってるAちゃんは、こんなガキやないし、
僕の知ってるAちゃんは、この子と違って配慮のできすぎる子やったし、
僕の知ってるAちゃんは、もっと、もっと……。
そんな僕の心中を知るはずもなく。
なんも言わん僕を見て、
さっきまで紅潮していた彼女の顔は、どんどん自信なさげに曇っていく。
さすがにちょっと、申し訳なくなる。
たぶん学生のバイトさんやろうから、仕事関係で会ったわけやないやろうし、
ライブ会場とかによう来てくれてる子、とかかなあ…。
僕はあの広い会場で、いつも僕の名前を書いたウチワを振ってくれてる 常連さんたちの顔を必死で想い出す。
うーん…。
今度は僕の顔が曇ってもうて、
それを見た彼女が恐る恐る、キレイに茶色く染めて ひとつにまとめた自分の髪を一旦ほどき、
耳の下でふたつに分けて、両手でそれを持った。
「…これでも、わかりません、か…？ あの、海の…民宿の娘の、Aです…」
「…あー！ 『民宿 ようそろ』の ！？ うっわー、全然わからんかったわ！」
正直、今の今まで、彼女の名前が「A」であることすら、完全に忘れとったけど。
たしか昔は髪の色は真っ黒で、肌もよう日に焼けていて、もっと素朴な印象やったけど。
「親父さん、元気なん？」と僕が勢いよく言いかけたところで、
店先で話し続けるAちゃんが 店の奥におったおばちゃんに怒られてもーたから。
僕は、なんの気なしに声をかける。
「バイト、何時まで？」
「え…えーと、あと１時間…いや、３０分くらいです！」
「ならこん先の店で よう行くとこあるから、そこの個室で飲んどるわ。終わったら来られへん？」
みるみるうちに顔がまた紅潮していくその子の気持ちにはまったく気づかんと、
僕は機嫌よく その店をあとにした。
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たまご(プロフ) - まれなさん» まれなさま、コメントありがとうございます！まだ書き始めて3.4ヶ月しか経っていない新米作者ですが、楽しんでいただけているならよかったです…！今後とも何卒よろしくお願いします^ ^ (2018年4月8日 23時) (
レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
まれな(プロフ) - いつもたまごさんのお話楽しみにして読んでます♪ 普通とは違う感じでまるで本当の小説を読んでるような感じがして本当にはまってます！！これからも期待してます！！ (2018年4月8日 22時) (レス) id: 77816b1cc4 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - たむこさん» たむこ様、コメントに気づかずレス遅れて本当にごめんなさい！！失礼しました！ 励ましていただいてうれしいです…なかなかうまく書けないですが見習ってがんばります！ 引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年1月27日 11時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たむこ(プロフ) - たまごさん» 先輩作者だなんてとんでもないです(T_T)まだ稚拙な文しかかけない新参者ですので...！これからもご無理のないようにたまごさんのペースで書いてくださいね(^^) (2018年1月22日 16時) (レス) id: 5f35bba986 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - たむこさん» たむこ様、うう、有り難いコメント本当にうれしいです。前作は処女作らしく勢いで書けたんですが、今回難しくて悩みながら書いてます…たむこさんのように先輩作者さんたちの偉大さを思い知っております。。。今後ともよろしくお願いします！ (2018年1月21日 22時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月16日 14時
