舵を切った想い ページ16
そして私たちは立ち上がり、もう営業も残りわずかになった民宿を振り返る。
建物の上には、海風でぼろぼろに朽ちてしまっているのに、もう手入れされる必要もなくなってしまった 看板がある。
「なあ、『ようそろ』って、なんなん？」
「…船乗りの言葉でね、舵を切って、船が向いている方向へ直進せよって意味なの。
お父さんが、生きる道を決めたら まっすぐそのまま走れっていう気持ちでつけたらしいんだけど…」
ーー民宿は潰れちゃうけどね。
そう言って笑ったら。
なぜだか急に、切なさがこみ上げてくる。
生まれたときから、育ってきた家。
たくさんの人が訪れて、また去っていく、一瞬の通り道。
……だけど、私にとってはずっと、ここが居場所だった。
さっきまで、もう章ちゃんに会えなくなることのほうが、悲しいなんて思っていたのに。
一生懸命信じた道を守ろうとして、それでも諦めざるを得なかった、お父さんとお母さん。
…ごめんなさい。
私はなんて薄情な娘なんだろう。
突然泣きだした私の頭を、
章ちゃんは何も言わずゆっくりと撫でる。
そしたらますます私の涙は止まらなくなって、
「寂しいよな」と小さく言って、
ゆるく抱きしめてくれた。
ーー民宿は潰れちゃうけど。
子どもの私でも、どんなにがんばったって、
叶わないことがあることぐらい、わかってるけど。
その時、私の想いは舵を切り、
まっすぐに 進むことを、心に決めていた。
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たまご(プロフ) - まれなさん» まれなさま、コメントありがとうございます！まだ書き始めて3.4ヶ月しか経っていない新米作者ですが、楽しんでいただけているならよかったです…！今後とも何卒よろしくお願いします^ ^ (2018年4月8日 23時) (
レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
まれな(プロフ) - いつもたまごさんのお話楽しみにして読んでます♪ 普通とは違う感じでまるで本当の小説を読んでるような感じがして本当にはまってます！！これからも期待してます！！ (2018年4月8日 22時) (レス) id: 77816b1cc4 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - たむこさん» たむこ様、コメントに気づかずレス遅れて本当にごめんなさい！！失礼しました！ 励ましていただいてうれしいです…なかなかうまく書けないですが見習ってがんばります！ 引き続きよろしくお願いします^ ^ (2018年1月27日 11時) (レス) id: 42d81ca1be (このIDを非表示/違反報告)
たむこ(プロフ) - たまごさん» 先輩作者だなんてとんでもないです(T_T)まだ稚拙な文しかかけない新参者ですので...！これからもご無理のないようにたまごさんのペースで書いてくださいね(^^) (2018年1月22日 16時) (レス) id: 5f35bba986 (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - たむこさん» たむこ様、うう、有り難いコメント本当にうれしいです。前作は処女作らしく勢いで書けたんですが、今回難しくて悩みながら書いてます…たむこさんのように先輩作者さんたちの偉大さを思い知っております。。。今後ともよろしくお願いします！ (2018年1月21日 22時) (レス) id: 30c6e5130b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：たまご
| 作成日時：2018年1月16日 14時
