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さよならのシーン【緑】18 ページ10

彼と付き合い始めてからの私は、ソーシャルゲームのシステマチックな会話を書く、ただの機械に成り果てていた


スキップされる前提の止め絵のキャラクターたちの会話

感情も心の揺れもどこかに置いてきてしまったかのように無機質な


景気のいい業界だったから、お金は悪くなかったし

ろくに打ち合わせもなく、事務所の介入もないからリテイクも少なかったし、入稿はメールで済むから、ほとんど家に閉じこもっている私にはぴったりだった



「ただいまぁ」


「おかえり」


開いていたノートPCをパタンと閉じたらそのあとは

彼のことだけをひらすら考える


笑っていても彼は疲れていることが多かったし、少しでも安らいでもらえるならそれでよかった


…でも

恋の季節が終わって、日常が日常として埋もれていった時


刺激に溢れ日々逞しく成長していく彼とは正反対に進化を止めた私を


こんな、機械のような女を彼はいつまで愛してくれるというのだろうーー…?





…あの晩


久しぶりに、以前付き合いのあったプロデューサーの人から電話があって

まだ彼が帰ってくるまでには時間があったから、私は久しぶりに化粧をして外へ出かけた


当てにしていた脚本家のスケジュールが破綻したとかなんとかで、深夜枠の、女の子のアイドルが主演の連ドラを書いてくれないかという打診だった


…私を、

思い出してくれたことが、うれしかった、驚くほどに

もうとっくに忘れられていると思ったのに


「ほらAさん、前 師匠のゴーストやってた時優秀だったからさ」


たとえそれがお世辞だとしても


「アイドル主演だけど、エモいやつにしたいから、感情書くのがうまい人に頼みたいんだよね」


その時の私にとってその言葉は

忘れかけていた、とても甘い蜜だった



“…がんばって”


ーー…翌朝


そのことを伝えた時の彼は、ひどく不機嫌で

私の心はすくみ上がる、気に障るようなことをしたのだろうかと



…でもきっと、一時的なことだろうと



私はそのことに目を瞑ったーー…

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Aki(プロフ) - 初めまして。たまごさんの作品には芯と真があって、心を抉られながらもその毒性ある棘を触ってしまいます。素敵な物語、されど味わったことのある表現できなかった過去の感情が溢れてきて、気持ちの整理が少々追いつきませんが、素敵な作品をありがとうございます。 (2019年10月24日 1時) (レス) id: 25a44a4956 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 『さよならのシーン』 うまく言えないけれど、切なさで胸がドキドキして泣きそうでした…素敵なお話ありがとうございました♪ (2019年10月23日 3時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - つい一気読みしてしまいました。切なくて胸がいっぱいになりました。たまごさんの作品はいつも心にスッっと響くものばかりで感動しています。次の作品も楽しみにしています。 (2019年10月23日 1時) (レス) id: cfcb601f80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2019年10月22日 23時

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