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さよならのシーン【緑】11 ページ3

…それからの私たちの目の前には、幾つかの試練があった



「…ごめん、好きな人ができた」


「ん…そんな気はしてたわ」



…人間というものは本当に勝手で


私は長く付き合った恋人と別れ、部屋に帰りひとりでわんわんと泣いた



優しい彼、親友のような彼は静かに笑って別れ話をして


別れ際の瞬間だけ、顔を崩して泣いていた



その顔を想い出す度 部屋の隅で嗚咽をしながら


罪悪感と自己嫌悪と半身を捥がれるような寂しさと、少しの安堵




“大倉くん”


“どした?”



私は、泣きながら彼にLINEを打つ




“さっき彼と別れました”


“そっか。会いたいけど今はあかん気がするからやめとくわ。がんばれ”




慰めてくれることをどこかで浅はかに期待しながら


やめとく、と言われたことを寂しく思いながら


こういう時、ちゃんと一人で受け止めてがんばれと言う彼を好きだなと思いながら


“会いたい”と言ってくれたことに喜びながらまた、わんわんと泣いた




…その時の私は大切な人を傷つけたことへの苦しさに押しつぶされそうな気さえしていたけれど


…どんな試練だって、進む道がその先にあるなら人は、残酷なほどに逞しく歩けるもので



あれからまた1か月後、私たちはそれぞれ晴れてフリーとなり




「…Aちゃん?」


「…ちゃん、いらなくない?」



「えー、なんか今更で変な感じするわあ」


「…忠義くんって言いづらいよね。たーくん? …いや無理だな」


「んー? 俺はなんでもええけど」




「…忠義?」


「…A?」



顔を見合わせて笑う


そんな、馬鹿みたいにありふれた会話をしてベッドの中でキスを繰り返しながら



…私たちは、恋人同士に、なった。

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Aki(プロフ) - 初めまして。たまごさんの作品には芯と真があって、心を抉られながらもその毒性ある棘を触ってしまいます。素敵な物語、されど味わったことのある表現できなかった過去の感情が溢れてきて、気持ちの整理が少々追いつきませんが、素敵な作品をありがとうございます。 (2019年10月24日 1時) (レス) id: 25a44a4956 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 『さよならのシーン』 うまく言えないけれど、切なさで胸がドキドキして泣きそうでした…素敵なお話ありがとうございました♪ (2019年10月23日 3時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - つい一気読みしてしまいました。切なくて胸がいっぱいになりました。たまごさんの作品はいつも心にスッっと響くものばかりで感動しています。次の作品も楽しみにしています。 (2019年10月23日 1時) (レス) id: cfcb601f80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2019年10月22日 23時

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