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さよならのシーン【緑】20 ページ12

「…ねえ、ちょっと話せる? なんか、ゆっくりできるの久しぶりだし」


「んー? お前も疲れとるやろ」


「…仕事、一旦落ち着いたから、しばらくはお休みだよ」


「ええなあ、俺の休みはいつんなったら来るんやろな」



ーー…初めて会ってから、5年


付き合いだして4年弱、一緒に暮らすようになって3年ちょい

彼女が仕事に熱中しだしてから、1年弱経った頃



…ちょうど、今から1年くらい前の秋のことやった。



部屋には、当たり前のように彼女と俺の荷物が混在し

もう、どれがどっちのもんか、わからなくなっていた


玄関にかけていた俺の上着には彼女の置いたディフューザーの薔薇の香りが移り


…愛情だけやない、日常となった生活がそこにはあった。



俺は彼女の仕事を邪魔したくはなかったし


彼女に執着すればするほど自分が嫌な男になってまう気がして距離を取るんが癖になっていて



…そん日も、リビングで座ってスマホいじってる俺の隣に座った彼女が話しかけてきたんを

顔も上げんまま、雑にいなした。







「…ねえ、私が仕事するの、嫌?」


「…嫌やないよ」



「…だったら、こっち見て?」



彼女は手を伸ばし

スマホ持つ俺ん手首を、そっと握った。




「…忠義が嫌なら、辞めようか?」


「ーー…」



「…嫌なら嫌って言ってほしい」


「…なんでそれを俺に決めさせんの? おかしない?」



「だって…」


「これで俺が辞めてって言うたら辞めるん? そんなんされても全然うれしないわ」



…最初に、会うた時の彼女が言った言葉がずっと頭にこびりついていた



“…辞めたら、自分が嫌いになるから”


俺はそんな彼女を “ええな”、と思った、多分あん時から俺はずっと彼女をええなと思ってた、自覚したんはずいぶん後のことやったけど


…やから


自分の都合で彼女を飼い殺して、そんな罪悪感抱えて生きてくなんてまっぴらやったし



それを俺に決めさせようとする彼女に腹が立つーー…




「…じゃあどうすればいいの」


「ええやん、そんままがんばれば、俺やってがんばっとるし、お互いーー…」



…気づいたら


「でもそしたら忠義は私のこと見てくれないじゃない!」


「お前かて見てへんやろ俺んことーー…!」



持っとったスマホを、壁ん向けて投げていたーー…

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Aki(プロフ) - 初めまして。たまごさんの作品には芯と真があって、心を抉られながらもその毒性ある棘を触ってしまいます。素敵な物語、されど味わったことのある表現できなかった過去の感情が溢れてきて、気持ちの整理が少々追いつきませんが、素敵な作品をありがとうございます。 (2019年10月24日 1時) (レス) id: 25a44a4956 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 『さよならのシーン』 うまく言えないけれど、切なさで胸がドキドキして泣きそうでした…素敵なお話ありがとうございました♪ (2019年10月23日 3時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - つい一気読みしてしまいました。切なくて胸がいっぱいになりました。たまごさんの作品はいつも心にスッっと響くものばかりで感動しています。次の作品も楽しみにしています。 (2019年10月23日 1時) (レス) id: cfcb601f80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2019年10月22日 23時

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