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さよならのシーン【緑】10 ページ2

…あの時、なんで私は“触りたい”なんて言ったのか


彼がお店に来てこちらを見ずに別の席に座った時すべてを悟り、必死に感情を押し殺して、ぶっきらぼうなほどに



“…Aちゃん彼氏おるのに悪かったなあ思って”


笑って、“気にしないで”と答えるのが大人の常識だとわかりながら、実際この2か月 恋人には理由を付けて会わずに居るような最低な私にそんな権利はなくて


ーー…でも、



“…ああ、ごめん もう触ったらあかんな”


そう言われた時、多分私は後悔すると思った


掌の中からするりと零れ落ちていくこの人を

掴みたいと思ってしまう震え上がるようなこの気持ちを閉じ込めては、たとえ砕け散ったとしても



…何もせずに、“そんなこともあったね”といつか笑って話す未来なんて私はちっとも欲しくなかった



欲しいのは


この人だけだと思ってしまった、溢れ出す



衝動ーー…





「ーー…は…、」


「ーー…」



腕を回した彼の身体の感触、匂い、温度

骨に響く声、吐息、微かに頬に掠れる髭、皮膚の質感、唇、舌…


身体中の細胞がそれに触れることに震え喜ぶーー…




「…Aちゃん」


「ん…」



…キスの合間、耳元で囁く低い声…




「…こんあと家、行ってええ?」



「……うん」



…私たちはようやく、その場で逸る指で連絡先を交換する


私は先にトイレから席へと戻る、ドアの隙間から誰もいないことを確認してすり抜け、お酒のお陰で時間感覚の麻痺していた仲間の元に




「…ちょっとプロデューサーからリテイク依頼来てたから、私帰るね」


座りながら揺れているキョンちゃんの肩に手を置いて伝え



荷物を持って立ち上がると、


ちょうどトイレから戻ってきた彼と、目が合うーー…





「ーー…」



「…じゃあ、私お先に」



「ん…気ぃつけて……また」




ーー…

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Aki(プロフ) - 初めまして。たまごさんの作品には芯と真があって、心を抉られながらもその毒性ある棘を触ってしまいます。素敵な物語、されど味わったことのある表現できなかった過去の感情が溢れてきて、気持ちの整理が少々追いつきませんが、素敵な作品をありがとうございます。 (2019年10月24日 1時) (レス) id: 25a44a4956 (このIDを非表示/違反報告)
ひ み さ(プロフ) - 『さよならのシーン』 うまく言えないけれど、切なさで胸がドキドキして泣きそうでした…素敵なお話ありがとうございました♪ (2019年10月23日 3時) (レス) id: 6eb2ce4a4e (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - つい一気読みしてしまいました。切なくて胸がいっぱいになりました。たまごさんの作品はいつも心にスッっと響くものばかりで感動しています。次の作品も楽しみにしています。 (2019年10月23日 1時) (レス) id: cfcb601f80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:たまご | 作成日時:2019年10月22日 23時

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