陽だまりのうた

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『はぁーーーーーーっ』ﾎﾟｽｯ





玄関を開けて、大量の荷物とともにベッドになだれ込む。





ベッドに散らばった、沢山の戦利品。
凛姫のクリアファイルに竹千代のキーホルダー。
ドキメンのアクスタに、ナマで聞いた眞崎様のセクシーボイス。
そして爆買いしまくって全種類コンプリートしたカケルくんのグッズ。




それを天井から見下ろす、カケルくんの特大ポスター。




いつもは仕事から疲れて帰っても、ここに大の字になってカケルくんと見つめ合った瞬間に、その日にあった色んな事が一瞬で浄化されて癒されてたのに。




今日は何だか 勝手が違う。
夢のような空間で刺激が強かっただけじゃない、何かが残ってる。





『……。』





自分の肩にそっと両手を置いてみた。




自分の手では再現しようもないほど、
あったかくて おっきな手。






"寄りかかって ええですよ"






脳内で勝手に再生される、
優しい 優しい 囁き声。



…もう一度、聞きたいような……ー







『はっ！！！！』





『違う違う違うっ！！！』






『私はカケルくん 一筋なのですーーーっ！』



『そそそ そんな目で 見ないでーーっ』









・








店員「あっ、いつもありがとうございますっ、生憎ですが今日は…」




『…』






世間ウケを狙って初回完全無料キャンペーンなんて打って出たりするから、お気に入りのマッサージチェアコーナーどころか個室が全部うまってた。




今日は"TIMERS"のフルカラー限定豪華版を読みふけって邪念を取っ払って、改めてカケルくんで満たされようと思ってたのに。





『古参の顧客大事にしないなんてっ』





背後から自動ドアの開く音がして、
さっきまで私へ申し訳無さそうに頭を下げていたお馴染みの店員さんが、"いつもありがとうございますっ、生憎…"って全く同じ台詞を繰り返すから、
聞こえないように毒を吐き出していたら、





店員「はい、誠に申し訳ありません」




「こんなけマニアックな作品集めといて今さら新規の顧客獲得も何もあらへんのとちゃう？」



「古くからの顧客あってのお宅やないん？そもそも古参のファン大事にできひんアイドルも大成せぇへんやろ？」




店員「いやいやっ、ご贔屓のお客様あっての当店ですよ、勿論っ。」




「お宅の経営戦略間違うてるわ、確実に。」





ひっくーい声でネチネチと店員に詰め寄るお客さん。



そうだそうだ！
と、心の中でエールを送った。

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