陽だまりのうた

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ペラ ってページを捲る音と、
たまに コキ ってなる首の音。
ン"ン"ッ って咳払い。




そんな小さな動きの度にフワンと漂う香り。




姿勢を直したり足を組み替える度に少しだけ重心が変わるソファー。




ごくたまに、触れあう肩。







『………。』ﾍﾟﾗ







漫画の世界に没頭する隆平くんとは対照的に
ちっとも集中できない私。





手の中には何もかも忘れて浸ろうと思っていた、めくるめく夢の世界があるのに。



いつものモノクロのそれとは違う、彩られた世界のカケルくんが私を見上げているのに。




音、匂い、振動、体温、
２次元とは違うリアルなそれが いちいち私の邪魔をする。






ギシッと大きく 隣が動いた。





右手にコミックを開いたまま 左手が目の前のテーブルに向かって伸びて、オレンジジュースのグラスを掴む。




グラスを迎えるように上がる顎のライン。
ゴクゴクという音とともに、喉仏が数回上下して、またグラスがテーブルに戻っていく。






『……』ﾋﾟﾗ







その一連の動作を目の端で捉えると またひとつ視覚というリアルが追加されて、
私の手はもはや ページを捲っているだけにすぎなかった。









「…何してる」


『ひゃっ！』





『ななな、何してるってっ、//』


「あっ、すんませんっ！お手元のカケル君が男前すぎて ついっ」







不意打ちで注がれた囁き声に、思わず声を上げてしまった。



盗み見ていたのがバレてしまったかと一気に冷や汗が出た私。
対する隆平くんは身体を縮こませて申し訳なさそうに眉を下げながら、私の膝の上のページをチョンと指差す。




その指の先にはこちらを真剣な表情で見据えるカケル君がいて、吹き出しの中には 今囁かれたのと同じ言葉が。






「この後、あれやろ？」


「カザネちゃんへの 愛の告白。」








その言葉に目線を上げた私。
綺麗な茶色い瞳が 私を見つめていた。








「お前のいない世界なんていらない」



「行かないでくれ」



「好きだ」






『……っ』








息が 止まるかと思った









そのまま、話す事も動くこともできなくなった私。





オレンジジュースに溶かされた氷が崩れ、カラン、と音を立てた。








『…っ、』
「っなぁんてっ」




「ちょっとなりきってみたかっただけっ」




「僕みたいなんが言うてもサブいだけよなぁっ」




「Aちゃんのカケルくん像を壊してもうてごめんなさいっ」

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