陽だまりのうた

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『おとととっ、』




思ったより多く注ぎすぎてしまったコップを片手に店内を歩く。



目指すは いつものマッサージチェアブース。




サイドテーブルに炭酸水と読み切り単行本二冊と、カケルくんの笑顔が眩しい最新刊を置いて。



ブランケットを掛けてエアコン対策をして、マッサージチェアのコントローラーをいつもの設定にして。




よし、読むぞ！
と、カケルくんに手を伸ばしたら、





「あっ！"TIMERS"の最新刊やぁっ！」





頭の上からめくれあがった声がして。



びっくりして見上げると、
サイドテーブルの上の最新刊を完全にロックオンして目を輝かしている、見知らぬ男の人。






「あれーっ、どこにあったんやろ？？俺どっか見過ごしてもうたんやろかーっ、」




「くぉーーーっ、無念っ！！」






私の頭の上で繰り広げられる一人芝居に圧倒されて、思わず。






『あのこれ、先にどうぞ…』



「えぇっ！？そんなっ、いや、ええですよ、読まれてからでっ！」



『いえ大丈夫です、私これ持ってるんで、、』



「えっ、ホンマ！？持ってますのん！？」



『あっ、はい。なのでどうぞお先に、、、』






私の申し出に顔を真っ赤にして恐縮しつつも、





「買っても尚読もう思うなんて、よっぽどええねんなーっ！」





また くぅーーーっ！って感嘆の声をあげる。



あぁ、ヒロインのカザネちゃんのファンなんだなって思ったとこに、





「カッコええもんなぁ、カケルくーんっ♪」




「ボクもカザネちゃんになりたいもぉーん！」





なんて声を上げるから。






『っ、私もっ！』


『私も次生まれ変わるなら、ぜったいにカザネちゃんになって、時の扉を開けてカケルくんに会いに行くって決めてるんですっ！』






私も、思わず立ち上がり力説する。
更に顔を赤らめ目を輝かしたこの人が、





「っそうやんなぁっ！」




「やって"時の扉は"っ」





って、プロローグのナレーションを口にするから、






「『"必ず、運命の人と繋がってる"！！！』」






って、ハモってしまった。






"んんっ！！！"
"ゴホン！！！"






一斉に咳払いを浴びる私達。





『っスミマセンっ！』

「はっ！ごめんなさいっ！つい興奮してもうたっ！！」





二人で慌てて周囲のマッサージチェアに向けて頭を下げた後、






「ホンマにスミマセンでした、、」






深く頭を下げてくれた。



実にプライベートでは数年ぶりの男の人との会話だった。

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