トラガスとロック

大義名分 ページ30

大「うわ！やっぱ開けたん！？可愛い顔してホンマやばいてあの人ー！あんなとこ穴開けるとこやないやろー！」



「出た、ヘタ倉！」


大「ヘタ倉言うな！笑」


渋「何やお前、ピアスぐらいでー。どれ、ホンマはついてないんちゃうか？」ﾑﾆｯ


大「ああっ///ちょおやめて！！」

丸「すばる！僕のも！」ｽﾞｲｯ

村「アホか！」ﾍﾞｼｯ


渋「そろそろお触り料戴くで？」

横「逆やろ！笑」




皆のわちゃわちゃに笑いながら、Aさん、きっと昨日より腫れてるやろなぁって思って。
思わず自分の耳をそっと撫でた。




帰り道に見かけたジュエリーショップ。




"ここにちっちゃなゴールドのループピアスしたらカッコいいと思わない？"





「…、、、」



ｺﾞｿｺﾞｿ…



「…まぁ、何とかなるか。」







店員「お出口までお持ちいたします。」

「あっ、ども、」



ｳｨｰﾝ
店員「ありがとうございました。」ｽｯ

「あっ、いや、こちらこそ、、」
ｶﾞﾂｯ
「っ、あだっ、」


「…ども。」ﾍﾟｺ




何だかこそばゆくて、勢いよく頭下げてもうたから担いでたギターが頭を直撃。
めっちゃ恥ずいからスンとしたけど、店員さんの口元歪んではった。





ええよな、これくらい。




昨日、アマチュア最後の日にAさんがくれたお祝い。


んで今日、プロになったおれがファン1号のAさんにプレゼント。




"御礼"っちゅー、大義名分つきの。





ホンマならCD売るなり、ライブやるなりして、プロとして得た収入でプレゼントできたらカッコ良かったんやけど。


現実は金ないし。
この分、牛乳とバナナで凌がなならんし。
そんなギャラを手にする日がいつくるかも分からへんし。



その間に、Aさんループピアス買うてまうかも分からんし。





…渋やんが、買うたるかも、、




…おれがやるのは、やっぱお門違いかなぁ、、




…いやいや、御礼やし！
感謝の気持ち、素直に伝えたらええだけやし！





突然襲った、自問自答の無限ループ。



でも最後には小さなショッパーを握る自分の指先を見て、
"自分に素直にいけばええねん！"
って、ヤケクソになった。








「Aさーん、おるー？」
ｶﾞﾁｯ



ｶﾞﾁｶﾞﾁｯ

「Aさーん？」



ｺﾝｺﾝｺﾝ

「おらんのー？？」


「ありゃ。タイミング悪いな。」




無理に閉じ込めてた冷静な自分がホッとしてるのを感じながら、
ギターケースのポケットに、プレゼントをねじ込んだ。

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