78話 ページ40
何だろう、なんだか変な感じがする。
この人の顔立ちが、どことなく見覚えがあって、それが、僕自身に感じた。
ゆっくりとこちらに歩み寄ってきて、思わず体に力が入る。
隣ではリチェが「え、なんか、Aに」と動揺した言葉が聞こえた。ロイドも何度か僕の顔とこちらに来る男性の顔を見比べている。
「君が……Aかい?」
男性は何か嬉しそうに、しっかりとした声で僕を見ながら、僕の名前を読んだ。
「……はい、自分はA・ミィシェーレと申します」
とにかく答えなければと、身分が高そうな身なりのため、心臓を捧げる敬礼した。
すると男性は ぱっと表情を明るくさせ、ましてや目に涙を浮かべはじめる。
そして突然、抱き締められた。
驚きのあまり僕は「え!?」と声を発して、されるがまま。
なんだ、なんだ、何が起こってる。
顔に当たるこの人の服からは、香水だろうか、とてもいい香りがした。
抱き締められる力が強い。
展開が急過ぎて呆けていたが、はっと我に返る。
「あの…!」
こんな人前で抱き締められるなんて恥ずかしい、ましてやこの場にはリヴァイ兵長がいる。
男性の腕の中で身動ぎをすると、ああ、すまない、つい、と手を離してくれた。
「失礼したね」
「い、いえ」
「自己紹介が遅れて申し訳ない、私はフォスター・プライス」
「A、私は君の兄にあたるものだ」
……なんて?
*
応接間にて。
僕と、隊長、秘書。
僕の兄だと名乗り出た男性。
そして、見覚えのある憲兵。この人は僕を地上に連れ出した人であり、2年前に母親の死刑確定を僕に知らせたあの兵士だ。
「公爵、先に話しても宜しいでしょうか」
憲兵の人が、控えめにプライスさんに尋ねた。公爵、という事はやはり彼は貴族なんだろう。『ええ、お願いします』と、気のいい感じで答えると、憲兵は膝の上に置いていた大きい封筒を僕に差し出した。
何かは分からないけど、それを両手で受け取る。
「2年ぶりか、私を覚えているかね」
そりゃあ、忘れたくても忘れられない。
本当はもう二度と会いたくなかった。
「覚えてます、お久しぶりです」
「その封筒には、君の出生の記録がされた資料が入っている」
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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます、絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね!絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜!マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします!! (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!更新楽しみにしてます! (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2018年3月31日 23時