66話 ページ28
チチ。
甲高い鳥の声で、目が覚めた。
窓が空いているようで、カーテンが風に靡かれその隙間から差し込む太陽の光が部屋の床を不規則に照らしていた。
部屋の中に入り込んだ風が心地いい。
鳥は窓の淵で休んでいるようで、また綺麗な鳴き声がよく聞こえる。
今は何時だろう。
作業用として使ってる机の上にある時計を確かめる。所々古びて、表面のガラスにはヒビがひとつ入っていた。
じっと目を細めて針が指す時刻を確認する。
12時17分。
その数字に驚いて、ベッドから飛び跳ねるように起きた。
一体自分はいつまで寝ていたんだ、そもそも何で班員は起こしに来ない。朝食をつくる当番なのに。
勢いのまま自室のドアを開けると、
「い゙っ!!」
ぶつかる鈍い音と、如何にも痛そうな声が聞こえた。
あ、と思って、少しドアを引いてからまたゆっくりと開け、その先を見る。
「ご、ごめん、大丈夫?」
鼻を抑えながら尻もちをついているロイドがいた。
その隣には驚きで目を真ん丸にしたリチェも居て、手にはスープ、パン、野菜が乗ったプレートを持っている。
ああ、ドアの前にいたのがリチェじゃなくてよかった…。
2人は午前の訓練が終わり、昼の休憩中に昼食を持って来たとのことだった。
そういえば調査兵団団長に今日は休暇を貰っていたんだ。
駐屯兵としてのやる事はと思ったが、もうこれだけ遅れてしまったのだから開き直って今はゆっくりして後で謝りに行こう。
「ここがAの部屋かー!」
リチェが何やら嬉しそうに部屋を歩き回って眺めている。
僕は昨日倒れてから何も食べていなかった為、届けてもらった昼食を早速食べていた。
空腹感があったせいか、やけに美味しい。水分の抜けたパサパサのパンも美味しく頂ける。
「割とごちゃごちゃしてんな、こことか」
上着を脱ぎながら、ロイドは床に置いてある本や、束ねられた資料を指して言った。
「いや、それ本当はそこのベッドに」
と言いかけたところで、飲んでいた豆スープが器官に入り盛大にむせ込んでしまった。
そうだ、そうだ…!
忘れていたとは言ってしまうには失礼だがすっかり頭から抜けていた。寝ぼけながらも過ごしたリヴァイ兵長との時間が鮮明に思い出される。
「おいおい、大丈夫かよ」
「だいじょうぶ…」
うわぁ。
いっそ思い出したくない事だった、情けないし恥ずかしい。
「俺の鼻に大ダメージ与えた罰だな」
「…だからごめんって」
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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます、絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね!絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜!マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします!! (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!更新楽しみにしてます! (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2018年3月31日 23時