62話 ページ23
「いつからここに?」
「20分ほど前」
「20分も……起こしてくだされば良かったのに」
「倒れた奴起こすわけにはいかねぇだろ」
暗闇に目が慣れてきた、彼の姿が良くわかる。
入浴を済ませて間もないのか、よく見ると髪の毛が濡れていて、首元にはタオルがかけられている。月明かりに照らされて、反射する黒髪が眩しく見えた。
「綺麗ですね」
口から出た言葉は、自分でも驚く程にか細く、どうした?と自分自身に問いかけたくなった。
「何が」
「あなたが」
「あ?」
彼は心の底から何を言ってんだ?といった表情に変わる。
なんだかそれが可笑しくて、笑いを含んだ吐息が出た。
「ついに疲れで目までやられちまったか」
「いえ、至って正常ですよ」
何だか可笑しくて、彼といるこの時間が嬉しくて、幸せで堪らなかった。
僕は重たい腕を持ち上げて、頭に優しく置かれたままの兵長の手に触れた。彼もそれに答えてくれるかのように手を裏返しては、指を絡めるように握ってくれる。
兵長との身長差はそんなにないはずなのに、手の大きさは格段に違う。
ゴツゴツしていて、いかにも男の手だ。自分とは正反対。
たまに兵長に、いや、周りの男性兵士に嫉妬する事がある。
なんで自分はこんなにも男のくせに外見が中性的であるのか。これが原因で、ローゼに勤務していた頃にも嫌な思いをした。
「ぼく、いっそ女だったらよかったのに、って、思うことがあるんです」
「どうして」
「これでも、訓練兵は首席で卒業しました。主な評価は対人格闘や、立体機動なんです。でも僕は基本的にどの兵士にも力負けしてて、必死に誤魔化して、いざと言う時は役に立てない事も少なくはなかった」
「うん」
「憧れがあるんです、普通の男性というのに。でもこんな中途半端な身体能力と外見で、嫌な思いもたくさんしました。なんか、凄く悔しく思うんです」
思い思ってた事が、流れるように出てきた。
何故だろう、兵長を前にすると心なにかが緩んでしまうのか、あまり他人には話さないような事を言ってしまう。
「それに、僕がおんなだったら………」
「だったら?」
言ってしまっていいのかな。
でもずっと気にしていた事でもある。
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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます、絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね!絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜!マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします!! (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!更新楽しみにしてます! (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2018年3月31日 23時