43話 ページ3
大木に刺したと思い込んでいたアンカーを巻き取ろうとスイッチを押す。引っ張られるであろうと予想していたがその感覚はやってこず、視界が反転した。
宙でバランスを崩してしまったのだ。
立体機動でミスをするなんて滅多になかった、訓練兵時代でも。だからこそ、空中で体がひっくり返った時どうすれば立て直せるか分からなかった。
もう片方のアンカーをどこかに刺そうとも考えついたが、視界の変化に動体視力が追い付いてこない。
ふわふわと、死んだはずの2人が見えていた、まるで白昼夢のようで。まだ現実に帰って来ていないらしい。
と、地面に叩き付けられる危機に迫られている筈なのに、呑気なことを考えていた。
「A!?」
後から、前から、左から、右から、上から、下から。
どこからかリチェが僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
何故だろう、何もかもが他人事のようだ。地面に垂直落下してる自分を、自分がどこからか眺めているような。
やばいんじゃないか?
そう静かに頭をよぎる頃には頭の重みで体は逆さま。
上、いや、下?
視線を向けると、土草がこちらに迫っている。
ぶつかる、そう思った瞬間。
どん。
何かに横から体当たりでもされたような衝撃が身体に走った。
でも痛くない。
右腕ごと腹部を抱かれた。
「うわっ」
反射のように出た僕の声は少し裏返った。
ブーツと、鞘が地面と擦れる音が激しく響く。でもそれは自分から響く音ではなくて、下から、いや下から包み込んでくれてる“者”から。
「おい」
ハッとした。この声は聞き覚えがある、むしろ忘れようもない、どこから掛けられても振り向きたくなる声。
「危ねぇじゃねぇか」
声がする方へ、上へと顔を上げて本人を確認する。
想像していた通りで、リヴァイ兵長だった。
そうか、大変だ、自分は今彼の上に乗っかってる状態で、落下してるところを彼が受け止めてくれたんだ。
空から降り注ぐ太陽の光で逆光になり、顔が暗くて見えない。ただ眉を顰め眉間にシワを寄せているのはよく分かる。
「す、すみません……」
謝罪の言葉しか出て来なかった。
太陽の光が雲で隠れ、彼の顔が少しだけ見やすくなった。その時、彼の目が大きく見開かれた。
あれ、変な事でも言ってしまっただろうか。
どうしよう、もう一度謝った方が…
「お前、なに泣いてやがる」
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やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます、絵を褒めてもらえるのは嬉しいです!! かっこいいと言われて主人公くんも喜んでるはず!笑 (2018年7月10日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Soleil(プロフ) - イラスト拝見させて頂いたのですが、めっちゃかっこいいですね!絵がとてもお上手ですね (2018年7月10日 14時) (レス) id: bc0cb92646 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Rainさん» 嬉しいお言葉たくさんありがとうございます〜!マイペースに頑張っていくので宜しくお願いします!! (2018年7月2日 17時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
Rain - すっごく面白いです!!これからも頑張って下さい!応援してまーす!更新楽しみにしてます! (2018年7月1日 22時) (レス) id: e08e47c2f9 (このIDを非表示/違反報告)
やし野(プロフ) - Soleilさん» ありがとうございます。コツコツ書いていくので今後とも宜しくお願いします(^O^) (2018年6月25日 21時) (レス) id: 3f26a78505 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やし野 | 作成日時:2018年3月31日 23時