もう少し療養 ページ10
時透と蜜璃は、三日後には目を覚まし、普通のご飯を食べていたらしい。
すごい。
その翌日、Aも水柱邸に帰る許可が出た。
「あくまで家に帰るだけだから、鍛錬をするのはまだ我慢してね。」
診察室にて。
しのぶがAにそう告げた。
『わかりました！』
素直に頷くA。
「それと、しばらくは定期的に経過を見せてもらうことになるから。」
『はい』
「あと・・・」
しのぶはじっと、Aの頭の上を見つめた。
『しのぶさん？』
何かついているだろうか。
きょとんとするA。
「次に来るときは、うちの髪飾りをつけて来てくれると嬉しいわ。ずっと冨岡さんの髪飾りなのだもの。・・・仕方ないけれど。」
(あ、そっか。)
しのぶが言ったのは、藍色の蝶の髪飾りのことだ。
冨岡に引き取られる前、蝶屋敷にいたときに渡されていた。
鬼殺隊に入る前までは、蝶屋敷に来るときにはつけるようにしていた。
怪我は予期できないのだから仕方がない。
けれど、定期検診ならつけて来られる。
ふふっとしのぶに笑いかける。
『もちろんですよ。しのぶさん。』
少し頬を染めて、しのぶは微笑んだ。
水柱邸に着くと、冨岡が門の前で出迎えてくれた。
「また上弦と戦ったと聞いた。」
Aのことをじっと見つめ、するりと頬を撫でられる。
「無事でよかった。」
そう言うやいなや、踵を返してスタスタ歩いて行く。
Aも久しぶりの水柱邸に足を踏み入れた。
思い返せば、遊郭での戦い以来、水柱邸に戻って来ていない。
せっかくだから、夕飯は鮭大根にしよう。
買い物かごを持ったAに、冨岡が声をかけた。
「俺も行く。」
『え・・・普通のお買い物ですよ？』
「それでいい。」
コンコンと革靴の踵を地面に当てるAの手から、かごを抜き取る。
最近は任務が急になくなって、冨岡も時間ができたらしい。
まあいいか、と呟くA。
二人は連れ立って歩き出した。
『まず魚屋さんです。いい鮭が入っていると良いですね。』
冨岡が期待に満ちた目で振り向いた。
「鮭大根か。」
『鮭があればですよ。』
食材を買い込んで帰路に着く。
少し遠回りをして帰ることにした。
川辺の道で荷車とすれ違う。
少し道を外れて足を滑らせそうになるA。
冨岡がAの手を掴んだ。
(あれ、これ、どこかで・・・)
Aの頭の中で、パチンと何かがはじけた。
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ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (
レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひかる | 作成日時：2024年3月9日 9時
