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優しい夢 ページ29

「稽古は楽しむものではないのではないか。」

『そうですけどね。』



鮭大根を食べながら、みんなの話をした。

甘露寺邸のパンケーキのこと。

岩柱稽古で仲良くなった隊士達のこと。


師範は口にいっぱい詰め込んでもぐもぐさせるから、口の周りに米粒がくっついた。

『もう。』

頬を膨らませるA。

仕方ないですね、と言って布巾を取って来る。



「疲れただろう。よく休め。」

『おやすみなさい。』

Aは冨岡に笑いかける。

寝巻きのAと違って冨岡はまだ隊服だ。

これから夜の警備の担当らしい。

鬼の出没がなくなったとはいえ、やはり柱は忙しい。



夢を見ていた。

Aは友達の、かずちゃんのうちから帰るところだった。

日が短くなってきている。

空はすでに紺色に変わっていた。


後ろからお菊が歩いて来る。

「走ると危ないですよ。」

お菊の方をくるりと振り向いて、Aはえへへっと笑った。

『だーいじょうぶ!』

パタパタとお菊の隣に戻って、片手を出す。

お菊は両手で持っていた花束を片手に抱えて手を繋いでくれた。

お菊はうちに来てくれているお手伝いの人だ。

持っているのはAが友達のかずちゃんと摘んだ花。

かずちゃんは大きいから、Aの知らない山の上の方までよく知っている。

今日も初めての野原まで連れて行ってもらったのだ。


家に着いたらお花をいけよう。

Aはそう考える。

きっとお母さんも喜んでくれる。

ほくほくした気持ちで歩いていた。


家に着くと、お菊が扉を開けてくれた。

『ただいまー!』

そう言って飛び込むA。

母が出てきてAの髪を撫で、お菊に礼を言う。

『お母さん!あのね、花瓶ある?』

「ちょっと待って。手を洗ってきなさい。」

(早くしたいのに。)

Aはじれったく思いながら、パッと手洗いを済ませた。

母が持ってきてくれたガラス製のビン。

それに水を入れて花をいけ、玄関に置いたAは大得意で・・・


(あれ、そうだっけ?)


何か引っかかる。

これはいつのことだろう。

これは・・・



Aは飛び起きた。

(違う、家の中はこんなんじゃなかった。)

赤く染まった記憶が脳裏をよぎる。

思わず耳を塞いで蹲る。

涙が何粒かポタポタ落ちた。


動悸が落ち着いてきたので、居間に戻る。

水を飲もうとすると、カタンと扉が動いた。


「すまない。起こしてしまっただろうか。」

あの日のことを→←帰宅と鮭大根



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ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひかる | 作成日時:2024年3月9日 9時

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