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帰宅と鮭大根 ページ28

師範のことを思い浮かべる。

湖面のような水色の瞳。

片身替の羽織。

柔らかい無邪気な笑顔。

Aの守りたいもの。


『のおおおおお!』


全身に力を入れて踏ん張る。

少しでも気を緩めたら押し負けてしまう。

(もう少し、もう少し!)

ここで止めたらまた一からだ。

水柱邸に帰る日が遠くなってしまう。

(あと少し!)

一町分岩を動かして、Aはそのまま倒れ込んだ。


『終わった・・・』


仰向けになって空を眺める。

しばらくそうして息を整えてから、寝泊まりしている小屋に戻った。



「俺様も負けねぇ!すぐ動かしてやるんだからな!お前に出来ることは俺様にもできる!」

身支度を整えるAを指さして伊之助が言った。

両足でバンバンと地団駄を踏んでいる。

よほど悔しかったらしい。


今にも飛びかかってきそうな伊之助と、伊之助を抑えている炭治郎。

そのの隣には善逸がいた。

あんぐりと口を開けてわなわな震えている。


『もちろん伊之助君もできるよ。』


髪を結い直したAは、三人に向き直って言った。


離れたところに玄弥を認めて手を振る。

小さく片手を振りながら玄弥が近づいてくる。

『大事なのは反復動作。玄弥君に教えてもらうといいよ。』

ね、と目線を移して笑う。

いきなり話を振られた玄弥はしどろもどろで答えた。


「なんだそれ、教えろ!!」


早速伊之助が食いついた。

玄弥は教えるのも上手だし、強面なだけで優しい少年だ。

同期の中でも話すことが少なかったが、これを機に仲良くなれたらいいと思う。


『四人ともありがとう。またね!』


そう言ってAは身を翻した。


悲鳴嶼にも礼を言って山を下りる。

さすがだな・・・と褒めてもらった。

水柱稽古には、Aが一番乗りなのだろうか。

そうだったらいいな、と思う。

鬼の出没がない間に、少しでも師範と一緒にいたいから。

二人で・・・というのはAの我が儘だが。



鮭大根の材料を買って水柱邸に戻ったA。

夕食の支度をするAの手元を、冨岡が覗き込んだ。


『師範?つまみ食いはあげませんよ。』


冨岡は目を泳がせる。

二人顔を見合わせて、くすくす笑った。


「その・・・柱稽古はどうだった。」


『とても勉強になりました。』

充実した稽古を思い返す。

どの柱のもとでの稽古もそれぞれ特色があった。

柱稽古で初めて知ったことばかりだ。

『でもやっぱり、師範との稽古が一番楽しいです。』

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ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ひかる | 作成日時:2024年3月9日 9時

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