蛇柱の伊黒さん ページ22
「お前のことは聞いている。」
ゴゴゴ・・・と聞こえそうな視線で睨まれる。
上弦の鬼かと思えるような圧だ。
何かしてしまっただろうか、とAは我が身を省みた。
伊黒がネチネチと畳み掛ける。
「今日来ると聞いて待っていた。随分とまあ遅くなったものだな。甘露寺と楽しく何を話していた。」
ひええ、と顔を青ざめさせるA。
『お待たせしてしまい申し訳ありません！』
何も言われていなければ縛り付けるのに・・・と呟くのが聞こえた。
恐る恐る稽古場を覗く。
柱のようなものがたくさん置かれていて、そのほとんどに隊士が縛り付けられていた。
「お前にはこの障害物を避けて刀を振ってもらう。」
隊士を障害物扱い。
初対面のときの不死川でも、もう少し優しかったのではないだろうか。
お前は縛り付けている暇がないのだと、木刀を渡された。
不死川にAは早く回してほしいと頼まれたそうだ。
これは手間取っていられない。
「さっさと始めろ。」
伊黒が構えた木刀を振った。
隊士たちを避けながら刀を振るのは、本当に難しい。
木刀とはいえ当たれば大惨事だ。
緊張で手が強張った。
そして伊黒の攻撃。
蛇のように自由自在に曲がる。
(刀って真っ直ぐ下ろすものじゃかったっけ？)
同じ木刀を振っているはずなのに、どうしてここまで違うのだろうか。
必死で直撃を避けながら伊黒の動きを観察する。
(手首かな？)
手首の動きが滑らかだ。
自分の動きを修正する。
Aの変化に気づいた伊黒は、軽く目を見張った。
翌日の稽古で、Aの木刀が伊黒に届いた。
木刀が触れた髪が揺れる。
「少し筋が良いからといって調子に乗るなよ。精々死なないようにすることだな。」
『ありがとうございました！』
相変わらず雰囲気は怖いが言葉だけ見れば純粋に心配してくれている言葉だ。
稽古を受けたのは正味一日だけだが、なんだかんだ伊黒もいい人なのだとわかった。
ネチネチと毒づきながら、伊黒は見送りに出てくれる。
Aは満面の笑みで手を振った。
緊張と期待を胸に水柱邸に戻る。
蜜璃に言われた通り、素直に聞くことが出来るだろうか。
稽古場に向かう冨岡の羽織を、Aはぎゅっと捉えた。
「A？」
振り返る冨岡。
俯いたAに一歩近づいた。
Aは顔を上げる。
『あの、師範。この間の話なのですが。』
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ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (
レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ひかる | 作成日時：2024年3月9日 9時
