ざるそば早食い勝負 ページ16
Aと善逸が走っているその頃。
蝶屋敷にいる炭治郎の元へ手紙が届いていた。
鴉につつかれながら広げる。
手紙は炭治郎の怪我の様子の確認から始まり、冨岡と話をしてやってほしいという内容だった。
きっとやり遂げよう。
グッと拳を握る炭治郎。
だが一つ引っかかる。
手紙の続きに、それについて書いてあった。
「私もね、これを頼むのはAの方がいいのかと考えたんだけれど、義勇もAに思うところがあるようだから・・・」
そこまで読んで天井を仰いだ。
(そうか。お館様も考えていたんだ。)
それにしても、思うところとはなんだろう。
七日して、宇髄のところでは合格をもらった。
「また遊びに来てねー!」
「待っているよ。」
おいしいご飯を用意してくれた須磨、まきを、雛鶴に挨拶して出ようとするAに、善逸がしがみついた。
「Aちゃん、待って。行かないでよぉ〜。」
Aは善逸をずるずると引っ張りながら歩く。
『ごめんね。善逸君。早く師範のところに帰らないといけないから。』
善逸は渋々、手を放した。
『頑張ってね!善逸君なら大丈夫だよ!』
Aは小さくガッツポーズを作る。
善逸は半べそをかいて頷いた。
のろのろと訓練に戻ろうとしたとき、スパーンと小気味良い音が鳴る。
俯いていた善逸は、宇髄の接近に近づけなかったらしい。
「いってえぇえ!」
と叫ぶ。
「善逸!だぁれが休憩だと言った!あと十本残ってんだろが!訓練終わった奴を困らせんじゃねぇ!」
ずるずる引きずられていく善逸。
泣きながらAに手を振った。
『またね〜』
Aからも手を振って、踵を返す。
向かうのはいつもの水柱邸だ。
Aはそれぞれの稽古が終わるごとに、二、三日の冨岡との稽古をすることになっている。
竹林を通って屋敷に戻る。
冨岡は一人、鍛錬していた。
『師範、ただいま戻りました。』
「おかえり。」
冨岡はいつもより少し明るい表情をしている。
『何かありました?』
少し考えて、冨岡が言った。
「炭治郎とざるそば早食い勝負をした。」
『え?』
目を瞬かせるA。
『それはまた一体、どうして・・・』
「わからない。」
眉根を寄せる冨岡。
まさか当人もわかっていないとは。
今度炭治郎に会ったら聞いておこう。
ただ一つだけ、気になったことがある。
『どちらが勝ったんですか?』
「・・・・・・内緒だ。」
103人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ひかる | 作成日時:2024年3月9日 9時