霞柱の時透さん ページ2
『だけど私の理由も結構、蜜璃さんに似ているんだよね。』
そう言って、握り飯を一口かじった。
蜜璃と別れた炭治郎とA。
二人は炭治郎の部屋で、玄弥に渡せなかった握り飯を挟んで話している。
「そうなのか?」
『私はね、師範に憧れて入ったの。』
両親を親に殺されたものの、なんとなく実感が持てなかった。
両親のことはもちろん悲しかった。
けれど、鬼に恨みを持つよりは、事故に遭ったような気分だったのだ。
そう、Aは話す。
『私が出かけている間に起こった出来事だったからなのかな。それとも家の中の惨状は、師範がすぐに隠してくれたからなのかもしれない。』
大切な人たちを傷つけた鬼を許しはしないが・・・。
頷く炭治郎。
だけど、と話し始めた。
「冨岡さんはそんなAに、救われているんじゃないかな。」
Aは目を丸くする。
『そうかな。』
「きっとそうだよ。」
炭治郎はにっこり笑った。
翌朝。
虎鉄との相談を終えたAは、山に入って鍛錬をしていた。
不意に声がかかる。
「ねえ」
振り向くと、長髪の男の子。
声をかけられるまで気が付かなかった。
「君の呼吸の伍の型、風の呼吸に似てるよね。」
パチパチと目を瞬かせる。
確かに玻璃の呼吸の伍の型は、風の呼吸を参考にしている。
だがなぜ、わかったのだろう。
「答えて。」
『え・・・あ、はい!』
「でも威力が弱すぎるんだよ。上弦に通用しないでしょ。下弦でも怪しい。何のために呼吸変えたの?」
近づいてきて、Aの手から木刀を抜き取る。
隊服のボタンは金色だ。
(柱なのか・・・そういえば、柱合裁判にいたような。)
随分若いように見える。
「霞の呼吸 陸の型 月の霞消」
彼は流れるように技を放った。
無駄がなく、速い。
それでいて霞のように捉えどころがない。
玻璃の呼吸の弱点を見抜いた目といい、実力は確かなようだ。
「見た?」
彼が振り返る。
『はい!』
「やって。」
木刀を投げてよこした。
戸惑うA。
「よく見て。」
片手を出された。
木刀を手渡す。
彼はもう一度、同じ技をやってみせた。
「明日までに出来るようになって。」
そう言って背を向ける。
『あの、お名前は?』
「時透無一郎。」
『時透さんですね。花咲Aと言います。』
「大丈夫だよ。どうせすぐ忘れるから。」
行ってしまった。
(なんだか、よくわからない人だなあ。)
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ひかる(プロフ) - ミユさん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(*^^*) (5月7日 7時) (レス) @page42 id: c4c9e482b4 (このIDを非表示/違反報告)
ミユ(プロフ) - 普段小説などで泣かないのですが、大泣きしました。この作品大好きです。 (5月6日 22時) (レス) @page45 id: 14f11f958d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ひかる | 作成日時:2024年3月9日 9時