笑い事 ページ5
少年の話は悲劇的であり一般人からすればそれは酷いものだった
愛し愛される幸せな家庭に育った彼はある日最愛の両親を盗賊に殺され、命からがら逃げた先の村に表面上厄介になる事になるも、その見た目から同年代は愚か大人にまで蔑まれろくな目に合わず
いつしか人を避けるようになったのだそう
そして昼間は家の手伝いを村の各家々にしにいき、夜はこうして誰と関わる事なく一人でのんびりと森で過ごすのが日課でそんな時にルシアにあったのだと
ルシアはそれを変わらず上機嫌に聞いていた
凄惨な話だがそれはルシアにとって笑い話でしかない
(惨めだ酷く惨め…)
そんな姿に堪らなく興奮する
(幼子にして幸せから絶望に突き落とされるとはなんと哀れ…そこから希望を与えてまた更に絶望に突き落としこの世の全てをその齢で信じられなくなるなど一日笑い転げていられる程の笑い事だ!)
ルシアは興奮を押し殺しアルトを見てさも同情し慰める様に優しい声色を作り言った
「そうか、それはさぞ辛かったろう。そんな境遇では誰も頼れず寂しかったに違いない。…これまで良く頑張って生きてきたな。きっとご両親も天国で応援してくれているだろう。」
すると少年は嬉しかったのか笑顔を浮かべた
そんな様子にルシアは順調順調とほくそ笑んだ
「そうだな…アルト、私は悪魔だ。だからお前の願いを何でも叶えてやれる。その村を消すでも、その体を周りと同じにするでも声が出るようにするでも…どんな事でも。私の名の元に必ず叶えると約束しよう。」
『ほんとうに?ぜったい?』
アルトはやはりその目をルビーの様に輝かせ、ルシアをじっと見つめながら言った
「あぁ。勿論。」
ルシアがそう言うと少し怯えている雰囲気から一変
本来の子供の様にはしゃぐ彼を見てルシアは内心大爆笑していた
(この後真実を知ってその輝く瞳から光が消え去り絶望に泣き叫ぶ事も無くただただ恐怖に震える姿を想像すると…ああいかん…どうしても口元が緩んでしまう…そうだ、いい忘れていた。)
ルシアは少年に言い忘れていたと声をかけると彼は首を傾げた
無知だなと嘲笑いたい気持ちを抑えルシアは続けた
「願いを叶えるにあたりその願いに見合う代償をいただく。まぁそこまで気にする事は無い。見合うとはいえ決めるのは私だし私が欲しい物を求めるだけだ。それでもいいか?」
聞くと少年は首を縦に振った
嘘は言っていないし事実は述べた
さぁそろそろ始めようかとルシアは手を差し伸べた
「我が契約者よ、貴様は私に何を願う?」
少年はノートに願いを書き記すとそれをルシアに自信満々に見せた
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闇鍋ソース(プロフ) - ナイフさん» ありがとうございます!今後も作る機会があれば続きを書きますのでよろしくお願いいたします (2019年8月17日 1時) (レス) id: a314e0ab78 (このIDを非表示/違反報告)
ナイフ(プロフ) - シリアスとギャグの使い分けがとても巧で、あっという間に最後まで読んでしまいました。とても面白かったです……。素敵な作品をありがとうございます。 (2019年8月16日 23時) (レス) id: db7c72b981 (このIDを非表示/違反報告)
闇鍋ソース(プロフ) - いちごシロップさん» コメントありがとうございます!頑張らせて頂きます! (2019年5月2日 2時) (レス) id: a314e0ab78 (このIDを非表示/違反報告)
いちごシロップ - 悪魔と人間が友達になる、って冒頭からほっこりしちゃいました。でもシリアスな場面もあって…。とにかくとても面白いです!これからも頑張ってください! (2019年5月1日 23時) (レス) id: 99dc49cbe7 (このIDを非表示/違反報告)
闇鍋ソース(プロフ) - まゆみさん» 人外×人間が大好きなんですよ…! (2019年3月31日 19時) (レス) id: 32007db41f (このIDを非表示/違反報告)
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