冷酷悪魔と筆談少年

ほのぼの ページ36

その日、魔界に震撼が走った
魔界の絶対なる支配者であるルシアが人間と長期契約を交わしたのだ
それも小さなアルビノの子供と
あるものはミミズカクテルを吹き出し
あるものは目玉が吹っ飛び
あるものは大事なヤクを床に垂れこぼし
あるものは凶器を落として獲物に逃げられた

「圧倒的弱者のこいつと契約を交わしたことに多くは疑問を抱くだろう。しかしそれがどうした。貴様らには関係はない。もし、反感があるのならば私達を倒し、新たな支配者にでもなればいい。倒せれば、だがな？」

そういいはなったルシアの姿は冷酷無悲の支配者たる形を決して崩してはいなかった
始めこそ困惑していた魔界の魔物達だったが変わらぬ情勢とそれなりに暮らしやすい魔界に文句はなく、消息していった
大半は
勿論これをあげあしにとり政権を奪おうと反旗を翻す者はいたが、ルシアに到達する前に彼女の部下に叩きのめされていた
何はともあれ、ミノスの読みは見事に外れ、ルシアは現政権を維持したままアルトと友になるという事を成し遂げたのだ
そして今日
城は前よりも活気に溢れていた

「だーかーらーいったでしょー？ミノスー。ルシア様なら大丈夫だってさー。」

「ミノスは、心配しすぎ。」

「用心するにこしたこたないでしょうがよー！」

「ミノス！喧しい！しずかにしろ！」

「二人は…！？」

理不尽に自分だけ怒られたことにミノスは半泣きになりながら突っ伏した

「うー、前よりも丸くはなったけどやっぱり僕には厳しいよー…！」

「フン、なにも変わっちゃないわ。」

血のブランデーを飲みながらルシアはホッとため息をついた
と、その時後ろから衝撃がきた

「アルト…危ないから急に抱きつくなって言ってるだろう！」

『だってルシア面白いんだもん！』

「こんの…！」

後ろで肩にしがみつきながらアルトは笑った
それを睨み付けながらルシアは隙ありと言わんばかりにアルトの首根っこを掴んだ

「貴様にはどうやら罰が必要なようだな…」

久々におどろおそろしい声色でいったので周りはいきをのんだ
しかし…

「それ、くすぐりの刑だ！」

「！」

雰囲気とはうってかわって下された罰は至って幼稚なもの
声こそでないがアルトのはひゅはひゅと息をする音がする
笑っているのだ
それを見てルシアも笑う

『こうさん！こうさんだよー！』

荒ぶった文字でそう書くもルシアはやめない
しかして二人ともどこか幸せそうなのだった
そんな二人に僕の一人と二匹もほっこりと笑った

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