ハグ ページ34
一方のルシアは胸が痛かった
わからない
何故痛いのか
でも事実として張り裂けるほどの痛みがルシアを襲っていた
(こんな気持ち…知らない…)
「殺せばいいじゃないか…あんな奴等!お前を苦痛に歪める者達等必要ない!生きている価値はない!お前が止めなければ私はすぐにでも…今からでも遅くはない。殺すよう言え!アルト!」
もはやその声は懇願する様なものに変わっていた
ルシアは殺したいのだ
それはいつもの無様を嘲笑う為ではなく
アルトの敵討ちがしたいというものだった
あんなに痛ぶられ、心身共に傷つく姿が心苦しくて
今まで彼と過ごした一時がちらついてその苦しみをより強くする
今の彼女の殺意はそういうものだ
前の彼女ならばそんなこと考えもしなかっただろう
アルトに止められても容赦なく殺しただろう
アルトが死ねば自分が死ぬから
その弊害は容赦なく滅ぼす
ただれだけ
しかし彼女はそれをしなかった
なぜか
アルトが悲しむからだ
彼女は己の意思よりもアルトの気持ちを優先したのだ
いまだにルシアの両目からは涙が落ちる
それを見てアルトは地面に指で言葉を綴った
月明かりに照らされたそれはルシアの目によくうつった
『きみのてをよごさせたくなかったから。だって、ルシアはぼくのともだちだもの。』
「っ…たった…それだけか…?」
震えるルシアの問いかけにアルトは満面の笑みで大きく頷いた
「は、はは…自分の命の危機だったんだぞ?今までだって辛い思いを…」
『きみがだれかをころしてしまうくらいなら、そんなのどうってことないよ。』
「…そう…か…」
ルシアは握り締めていた拳をといた
(何だか毒気が抜かれてしまったな…まぁ…もういいか…魔界の権力が脅かされようがそんなものは私がどうとでもしてやればいい。こいつは私の友として、そばにいてくれたらいい。)
ルシアはその場で跪く姿勢に切り替えると深く頭を垂れ、目を閉じた
「大悪魔ルシア、契約に乗っ取り、改めて貴殿の友として使えることを誓います…」
その言葉を言うや否や肩をたたかれた
不思議に思い頭をあげるとやれやれといった感じの顔で下を見るよう仕向けられた
改めて下を向くとそこには
『ともだちなんだからかたいことはやめよう?するとしたら…』
そこで言葉が途切れていたがアルトを見てその答えがわかった
「…成る程…そう言うことか…本当にお前らしいよ…アルト。」
アルトは腕を大きく広げて白い歯を見せた
それに答えるようにルシアはその腕を受け入れる
大きな月に照らされながら二人は互いを抱き締めあった
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闇鍋ソース(プロフ) - ナイフさん» ありがとうございます!今後も作る機会があれば続きを書きますのでよろしくお願いいたします (2019年8月17日 1時) (レス) id: a314e0ab78 (このIDを非表示/違反報告)
ナイフ(プロフ) - シリアスとギャグの使い分けがとても巧で、あっという間に最後まで読んでしまいました。とても面白かったです……。素敵な作品をありがとうございます。 (2019年8月16日 23時) (レス) id: db7c72b981 (このIDを非表示/違反報告)
闇鍋ソース(プロフ) - いちごシロップさん» コメントありがとうございます!頑張らせて頂きます! (2019年5月2日 2時) (レス) id: a314e0ab78 (このIDを非表示/違反報告)
いちごシロップ - 悪魔と人間が友達になる、って冒頭からほっこりしちゃいました。でもシリアスな場面もあって…。とにかくとても面白いです!これからも頑張ってください! (2019年5月1日 23時) (レス) id: 99dc49cbe7 (このIDを非表示/違反報告)
闇鍋ソース(プロフ) - まゆみさん» 人外×人間が大好きなんですよ…! (2019年3月31日 19時) (レス) id: 32007db41f (このIDを非表示/違反報告)
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