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ページ33

…筈だった

「…なんの真似だ…」

ルシアのスーツの袖を弱りながらもしっかりと掴む小さな手
その手の主にルシアは睨みを効かせた

「あんなクズどもを庇ってどうする。貴様は現にあいつらに殺されかけたんだぞ…?アルト!」

アルトは小さな呼吸音をならしながら、赤い瞳を潤ませる
そんなアルトにルシアは怒鳴った
しかしそれでもアルトはやめない
それどころかよりいっそう掴む力を強くした
口を引き絞りながら小さく横に首を振る
それらの行為がこのゴミ達を殺さないでと訴えている
ルシアにはその意図がわからなかった
しかし、ここで殺したらアルトは悲しむ
それは事実だった

「貴様等…」

「ひぃっ!?」

声を揃えてその体躯には似合わない悲鳴を小さくあげる男達を忌々しげに睨む

(本当は殺したい…殺したいが…)

自分の殺意を殺しながら、ルシアは言った

「二度とこのような真似はするな。同じ行為をした時、私はまた現れよう。その時こそが貴様等の命日だと思え。精々怯えながら生きるがいい!」

その言葉と共にルシアはアルトを抱えて月の向こうへ飛び去った
男達はそれをただ茫然と見上げていた
あるものは失禁し
あるものは安堵し
あるものは涙した
様々な様子を見せる男達だったがこれだけは一致していた
もう二度と、アルトにしていたような事はしないと
焼けた小屋や草木にはまだ、今までの事が事実であったと決定付けるように青い炎が夜風に揺らめいていた

ーーーーー

男たちからかなり離れた場所にルシアは降り立った
ルシアはまた秘薬をアルトの口に含ませた
喉も傷つけられていたので少しずつ、ゆっくりと飲ませた
傷はやがて治り、アルトははっきりと目を覚ました
それを確認するとルシアはホッといきをついた
しかしそれもつかの間
ルシアはキッとアルトを睨んだ
その睨みにアルトは怯んだ
恐怖からではない
自分が行った行為を咎められるからだ
叱られるのを覚悟し、アルトは目をキュッと閉じ、俯いた

「何故だ…アルト…何故、あいつらを見逃した…」

しかし聞こえてきたのは泣きそうな、いつも聞いているあの声とは違う弱々しい声
ハッとしてアルトは顔をあげた

「お前は傷ついただろう、痛かっただろう、苦しかっただろう…それなのに…何故…!」

そこにいたのは冷酷無悲の高慢たるプライド溢れる支配者の姿はなく、ただ涙を一つ二つと流す女の悪魔がいた
目を赤く腫らしながら、唇を噛み、拳を握りしめ、眉を潜める
その瞳には悔しさとアルトに対する心配が滲み出ていた

ハグ→←断罪の焔



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闇鍋ソース(プロフ) - ナイフさん» ありがとうございます!今後も作る機会があれば続きを書きますのでよろしくお願いいたします (2019年8月17日 1時) (レス) id: a314e0ab78 (このIDを非表示/違反報告)
ナイフ(プロフ) - シリアスとギャグの使い分けがとても巧で、あっという間に最後まで読んでしまいました。とても面白かったです……。素敵な作品をありがとうございます。 (2019年8月16日 23時) (レス) id: db7c72b981 (このIDを非表示/違反報告)
闇鍋ソース(プロフ) - いちごシロップさん» コメントありがとうございます!頑張らせて頂きます! (2019年5月2日 2時) (レス) id: a314e0ab78 (このIDを非表示/違反報告)
いちごシロップ - 悪魔と人間が友達になる、って冒頭からほっこりしちゃいました。でもシリアスな場面もあって…。とにかくとても面白いです!これからも頑張ってください! (2019年5月1日 23時) (レス) id: 99dc49cbe7 (このIDを非表示/違反報告)
闇鍋ソース(プロフ) - まゆみさん» 人外×人間が大好きなんですよ…! (2019年3月31日 19時) (レス) id: 32007db41f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:闇鍋ソース | 作者ホームページ:http//  
作成日時:2019年3月22日 14時

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