冷酷悪魔と筆談少年

後悔と懺悔 ページ31

「姉貴起きて！早く！」

「っだぁ！？」

スカルに頭を殴られルシアに頭痛が走る

「何をするスカル！貴様はその頭蓋。豚の餌皿にでもされたいのか！？」

ルシアはスカルをキッと睨んだ
しかしスカルは少し動揺するも真剣に言った

「そんな事言ってる場合じゃないでさぁ！外見てくだせぇ！」

「はぁ？助けるのはお前に任せただろ！？」

「外に出られないんでやすよ！」

「何…？」

スカルの言葉にルシアはハッとして外を見る
外は光が指さず何も見えないが男の嘲笑と耳障りな叫び声が耳をつく
そしてその中で微かに聞こえる弱い呼吸音

「何事だこれは！」

「村の男達がアルトを死体にして売り払うと！その前に今までの鬱憤をはらすと棍棒で…」

「愚かな…！」

(今まで鬱憤をためていたのはどちらだ！貴様ら全員アルトをなぶっていたではないか…！)

ルシアの胸は怒りで熱くなり出口を叩く
しかし光の指さないこの小屋の中では影が出来ない
これではスカルも手出しが出来ないのだ

「なぜすぐ対処しなかった！」

「月が陰ってて影ができなかったんでさぁ！」

「クソが…！おのれ人間共め…」

何も出来ない自分に怒りが込み上げくる

(何が魔界の支配者か！何がこんな餓鬼を連れていたら支配者に相応しくないだ！たった一つの契約も守れないなどとんだ恥だ！それこそ支配者に相応しくない！これこそ自分が恐れていた事ではないのか？部下の言葉を丸飲みし、それを行い、この様か…支配者ならば己で考え更によい物にするべきだったのだ！)

ルシアは深く後悔した

(支配者…失格だ)

「どうすれば…」

考えを巡らせるが何も浮かばない

(影が一瞬でも出来れば…)

ルシアは唇を噛み締めた
外から聞こえてくる僅な弱々しい呼吸音はアルトの今の凄惨さを物語る

「私は…」

(助けたい…助けたいのに…)

何故見捨てる等という選択肢をとったのか
もっと時間をかけていれば
公務に響くなどとそんな事はどうでもいい
どうにでもできた筈だ
ルシアの中で後悔が渦巻いた

助けたい
その一心
ルシアは外に向かって拳を突き上げた
外に出る事はできず空しく壁を殴る音がする

「クソ…」

自分でも何故こんなに必死になっているのかルシアは分からない
ただ頭にちらつくのは今までの暮らし
彼と共に過ごした日々
その一つ一つがルシアを少しずつ変えたのだ
ひょんな事から生まれた友の存在は冷酷な彼女の心を少し溶かしたのだ
そう
ルシアにとって、アルトは既にかけがえのない存在となっていた

「アルト…」

掠れたような声が影のなかに響く
その時だ
扉が開き誰かが入ってきた

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