冷酷悪魔と筆談少年

夢 ページ24

「あー…」

「ル、ルシア様…」

早朝、ミノス達は目を見開いた
昨日、リンリンリンリンアルト達がベルを鳴らしてくれたおかげで見事に寝不足になったルシアはいつも以上に目元のクマが深くなっていた
目付きも訝しげで近づく事に恐れをなす程には恐ろしい形相である

「アレー、あんたのせいだよ…」

「ご、ごめんなさいルシア様ぁ！」

アレーはコレーに咎められ涙目に謝ってきた

『ごめんルシア…』

アルトもしょぼんとしつつノートを掲げた
ルシアは眉間をつねりつつも笑顔をでいった

「案ずるな。この程度私にはどうって事はない。気を落とすなアレー。」

「ル、ルシア様ぁ…！」

アレーは泣きながらその慈悲に感謝した

「お前も…よくこの顔で逃げ出さないな…こいつらですら一瞬震えるほどの形相なのに…」

『ルシアはぜんぜんこわくないよ！ぼくにこわいものなんてないもん！』

「えぇ…」

自信満々にノートを見せるアルトに偽りは欠片もなく、更に怖がらせる事が難しくなったとルシアはその方が苦悩だった
とは言えいつまでも突っ立っている訳にはいかない
もう出発の時間なのだとルシアはスイッチを切り替える

「では、お気をつけて。」

「ルシア様、本当に大丈夫でやんすか？」

「誰に物言ってる。大丈夫と言ったら大丈夫だ。」

「そうでやすか…」

スカルの心配を押し退けルシアはアルトの影に潜った
影の中は静かで外からの光はあるものの心地いい

「少し位寝ても構わないだろう…」

ルシアはそう思い立ち、目を閉じた

ーーーーー

燃え盛る業火
泣き叫び逃げ惑う人間
その情景は正に地獄絵図であった
その世界を更に壊しながら笑う影
狂気とも言えるそれは人を切り裂き、燃やしつくし、蹂躙する
あれは誰だ
私だ
かつての私
この上ない喜びと幸福と興奮を感じた記念すべき最初の殺戮
一人残らず殺し
一片たりとも残さず燃やし尽くした木々花々
その耳に聞こえる嘆きと苦しみの声は心地好い
涙すら蒸発しそこに確かに生きていた存在を消し炭にする
嗚呼なんと甘美な光景だろう
許しをこう声に耳も貸さずその喉元を切り裂く感触
女子供だろうと関係ない
死ね
死ね
死ね
とにかく死ね
早く死ね
苦しみ抜いて死ね
叫び声をあげて死ね
許しを乞いながら情けなく死ね
血の雨を浴びながら私は笑う
全てを壊し
青い炎の中この世の誰よりも幸せそうに高笑いをあげた自分
しかし何故だろう
何かが痛い
自分の中の何かが叫ぶ
この感覚は何だ
わからない
その後に感じた喪失感は今でもわからない
まぁそんな事はどうでもいい
私は悪魔
他人を殺し
不幸を喜ぶ
それが私なのだから

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