第九話 ページ10
「西園寺様?」
「っ!」
一の声で現実に引き戻される
いつのまにかダンスは終わっていた
唖然とする私を置き去りにドラムロールが鳴り響く
採点結果が出るようだ
まぁ私も本気で踊ったのだ
99点位出てもおかしくは…
「な、なんと!過去最高記録!満点です!」
「はぁ!?」
アナウンサーの声に私はぎょっとする
画面には100の数字
見間違いと信じたかったが何度みても100点満点だ
「嘘だろ……?」
この機械どこか故障してるんじゃないかと機械班に文句をいいにいこうとすると歓声が響いた
「流石潮様!」
「あの庶民の奇行にも対応できるだなんて!」
周囲からは何故か私を称賛する声が聞こえてくる
な、何故?
隣では一も拍手していた
「凄いですね西園寺様。慣れないステップも完璧にこなすなんて。」
「は?」
「踊って良かったでしょう?俺の評判は少し下がりましたし、西園寺様の株は更に上がりました。」
「はぁ!?」
まて、こいつまさか
私の株をあげる事も計算の上で踊ったのか!?
どこまで完璧にこなすつもりだこいつは!
いや、だからといって私と踊らなくても
まさか私が女に手引きすると分かって?
はっとしてもう一度一を見る
心なしかニヤついているようにもみえた
こいつ……!
「いやー、西園寺様が女性のステップも踏めるなんて驚きました!凄かったですよー!」
「うっさいわ水無瀬!だあってろ!」
「えぇっ!?」
話しかけてきた水無瀬に思わずあたる
クソ、クソ!
まるで全部こいつの掌の上で踊らされてる気分だ……
逆であるべきなのに!
悔しさに拳を握る
なのに……なのに!
「あれ?西園寺様?顔が赤いですよ?」
「はっ?」
一の言葉に一瞬時が止まる
嘘だ
そんな筈がない
「あ、本当だ!西園寺様熱でも……」
「違ぁう!」
「フベラァ!」
理不尽に水無瀬を殴り飛ばして会場を出る
少しざわついたが数秒すれば滞りなくパーティーは再開した
それを確認してトイレに駆け込むと私は思わず鏡を殴る
「クソ……クソが……!」
嘘だろ?
己の否定とは裏腹に鏡は現実を映し出していた
あの時、共に踊る一を見て私が
ときめいてしまっただなんて……
「あんな……庶民ごときにこの私が……!」
顔を覆って壁に背中をついて崩れ落ちる
一の表情を思い出す度顔の熱は上がっていく
優しく優雅なステップも体を支える腕も
全てがかっこよく見えてしまった
「クソォ……」
してやられた
あいつはどこまで私を出し抜く?
「今度はそう易々上手く行くと思うなよ……!」
心とは裏腹に顔はまた熱くなっていた
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作者名:闇鍋ソース&ナイフ x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mesemoaLOVE/
作成日時:2019年8月18日 20時