部下が優秀すぎてむかつく件について (ページ13)

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第十二話ページ13

「潮様、一様がおいでです。｣

私が学校へ行く支度を整えたころ、ドアの向こうからメイドの声がした。
なぜこう、タイミングよく来るのか。少しストーカーじみていると思った私の感性は正常である。

しかし今日は待ちに待った創立記念祭！今回こそは一をぎゃふんと言わせて、庶民共にみせつけてやるのだ。
お前たちのトップも大したことは無い、と。

外へ出るとそこにはメイドの言った通り、一が立っていた。西園寺様、手をと言うので言われた通り手を出す。
するとやつは私の手をとり、そのまま歩き出すではないか。

「ちょちょちょ、ちょっと待て！！！」

「どうかしましたか？」

きょとんとする一。ひと様の顔をここまでぶん殴ってやりたいと思ったのは初めてだ。
いやそれよりも、

「どうかしましたか？じゃない！貴様何を考えている？手を繋いで登校など私は断じてごめんだからな！子供じゃないんだぞ！」

そう言って振り払おうとするが、力が強くてそれは出来なかった。くそっ。心の中で舌打ちをする。忌々しげに一の顔を見上げると、その表情が悲しそうで思わず暴れるのをやめる。

「以前、両親の話したのを覚えてますか？俺はもう身近な人を失いたくないんです……。」

「す、すまない……。わかった。手を繋いで登校することを許可してやろう。ただし私がかすり傷ひとつしてみろ、絶対に許さないからなっ！！！」

あんまり切実に言われると、素直に謝ることしかできず、それが悔しくて半ば一を引っ張るように早足で歩く。
その時、一が急に止まりぐんっと後ろによろける。何事かと後ろを振り向く。
すると一は点滅信号だから、次の信号が青になるまで待てと言う。

そのあとも一は横断歩道できっちり右と左を確認し、点滅で止まり……。
当たり前の交通ルールといえばそうなのだが、だとしても過剰ではないか……？結局、学校にはいつもより30分ほど遅れて到着した。