第十一話 ページ12
「西園寺様ー、買って参りました。」
「ご苦労。」
戻ってきた一に私は特に難癖つけずにコーヒーを受けとる
少しきょとんとした顔をする一に私はフッと笑う
表情のないこいつがたまに見せるちょっとした表情の変化は面白い
たまには難癖をつけるのをやめるのもいい手段だな
……決して何回試しても自分が惨めなだけだからとかそう言うことではない
私は頭を振って気持ち切り替えると一に向き直った
「ところで一、貴様に話がある。」
「何ですか？」
「創立祭、私と一緒にまわらないか？」
「ゴフッ……！？」
「！？」
誘いに乗らせる為にいつもとは違う優しげな笑顔で誘えば一は飲んでいたお茶を吹き出した
幸い奴の服にお茶がこぼれただけなので床は一切汚れなかった
ってそんなことはさておき何があった
「ど、どうしたぁ！？」
「いえ、おきになさらずに。」
いや気にするわ！
真顔で言う一だったが体はプルプル震えているように見えた
何だ？
……まさか創立祭に何かあるのか？
ならば尚更の事誘わなければ
もしかしたらこいつの弱点を探れるかもしれん
「嫌か？」
私は比較的穏和に聞いた
「いえ、滅相もありません。御同行させていただきます。」
どうやら持ち直した様で、一はいつもの真顔でそう言った
「あぁそうだ。貴様、家族は招待するのか？ならば私が招待状を出してやるが……」
創立祭は家族も招待状があれば参加可能だ
無様なこいつの姿を見せれば親にも無様な姿をさらすことになる
その姿の何と滑稽なことか
想像するだけで笑みがこぼれる
しかしここは私
本心は見せないぞ
するとさっきとは一変
一は少し暗い顔をして言った
「それには及びません。」
「何故だ？」
首をかしげると一は静かに言った
「俺の両親は既に、交通事故で亡くなりましたので。」
「交通……事故……？」
その言葉は私の心をざわつかせた
何だ？この感覚は……
「はい。雨の日に二人一緒にカーブを曲がりきれずに……」
「……そうか……酷なことを聞いた。すまない……」
庶民の不幸など嘲笑ってやればよいものを
この時の私はそれを素直に喜べなかった
何か引っ掛かるもののこれ以上こ沈黙はキツイと話を変える
「ま、まぁそれは置いておいて｡創立祭の時は私を家の前まで迎えにこい。」
「な、何故ですか？」
「一緒にまわるんだ。折角の催し物、楽しまなくては損というもの。だから護衛達には休暇をとらせたんだ。その代わりに貴様が私の護衛をしろ。と言うことだ。」
一は納得したようにあーと言った
そんな一はどこか浮かれているようにも見えた
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作者名：闇鍋ソース＆ナイフ x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mesemoaLOVE/
作成日時：2019年8月18日 20時
