部下が優秀すぎてむかつく件について (ページ11)

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第十話ページ11

ダンスパーティーから1週間が過ぎたころ、執務室では相も変わらず潮が一にひと泡吹かせるべくうんうんと唸っていた。ダンスパーティーで見事に一に出し抜かれた彼はそれをどうしても挽回したかったのだ。

予想外の出来事に慌てふためいて泣きすがって私に助けを乞う一の顔を拝んでやりたい。
だがどうする？
そうやって一のことを考えれば考えるほどダンスパーティーの姿が頭をめぐり、とてもいい案は浮かびそうにない。

その時コンコンとノックの音がして一が書類の束を持って部屋に入ってくる。
そういえば学園創立祭の予算申請書の回収を任せていたんだったか。
一から書類を受け取って、承認印を押していく。

学園創立祭は2日間にわたって開催される神代学園の一大イベントだ。と言ってもやることは他校の学園祭と同じようなもので、違うところと言えば招待状がなければ一般人は立ち入ることができないという点だろうか。また、一般人を招待できるのも貴族クラスのみの特権で、庶民が家族を招きたければ貴族に頭を下げるしかなく、それに不満を持つ庶民も少なくない。

不意に一が「創立祭、楽しみですね」と言った。その言葉の真意を探ろうとしてチラりと一を見やったが、結局、適当にそうだなと返すだけだった。

最後の1枚にハンコを押して、一に飲み物を買いに行かせる。再び潮が頭を抱え始めたところで、残された水無瀬が声をかけた。

「西園寺様、創立祭はある意味チャンスではないでしょうか？」

「チャンス？」

「創立祭を一と回って、その度に課題を出せば言いなりになるやつの姿を全校生徒に見せびらかすことができるのでは？」

ふむ、確かに名案かもしれない。
招待された者がいる場だ。上手く行けば全校生徒のみならず、外部の人間にも西園寺の力を見せつけることができる可能性だってあるのだ。

ちょうど飲み物を持って帰ってきた一を、水無瀬の言った通りに創立祭へと誘ったのだった。