チャンス ページ10
エレンside
Aさんは部屋を出て行った。
リヴァイ兵長は心配そうな顔をしていたけど、会議があるから出られない。
幹部ではない者は追い出された。
俺はみんなとは一緒に行かずにAさんの部屋を訪ねた。
ごめんなさい、リヴァイ兵長。
もう一度俺にチャンスをください。
Aさんを手に入れるチャンスじゃない。
Aさんに告白するチャンス、そしてAさんのそばにいること。
「Aさん?入りますよ?」
俺はそう断って部屋に入った。
Aさんは目薬をさしている途中だった。
「あぁ、エレン。どうしたの?何かあったの?」
そう言うAさんの目は赤かった。
アレルギー症状で充血してることを言ってるんじゃない。
泣いた後のように目が赤いんだ。
「何かあったのはAさんの方じゃないんですか?」
俺が言うとAさんはフッと笑った。
その泣き笑いは美しくも、儚かった。
俺は思わず抱きついた。
「無理に笑わないでください。泣きたい時は泣けばいいって言ったじゃないですか。俺はAさんが好きです。だから笑っていて欲しいんです」
俺が言うとAさんは困ったように笑った。
俺はAさんが口を開く前に言った。
「わかってます。Aさんにはリヴァイ兵長がいます。だから俺に勝ち目はありません。俺はAさんが幸せならそれでいいので」
嘘だ。
本当は良くなんかない。
でも、Aさんには笑っていて欲しいんだ。
「ありがとう、エレン。でも今泣くと目が余計に痛くなるから」
Aさんはそう言った。
俺はAさんの泣いている顔も見たくないけど苦しむ顔も見たくない。
「分かりました。でも、もしリヴァイ兵長に泣かされたら言ってください。全力で奪いに行くので」
俺はそう言って敬礼し、部屋を出た。
スッキリした。
でも、これで終わってしまったようで寂しい。
だが今はAさんのことを考えてるべき時じゃない。
調査兵団、そして人類のために動く時だ。
俺はそうしてAさんへの感情を頭から追い出した。
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作者名:カシオペア | 作成日時:2017年9月16日 8時