壊して？ ページ39
リヴァイside
俺はA手首を押さえた。
俺はAに近づいて、キスした。
Aの力が抜けるまで、俺は離さなかった。
Aは潤んだ目で俺を睨みつけている。
「目が覚めたか？」
Aは反応しなかった。
ただ、立ち上がって、こう言った。
「頭冷やしてくる」
そうして割れた窓に向かった。
さっき雨が降り出して、外は土砂降りだ。
それでもAは気にせずに飛び出していった。
「リヴァイ、Aを追いかけてやれ」
エルヴィンに言われるが早いか、俺は窓から飛び出した。
Aはひらけた場所で目を閉じ、上を向いて立っていた。
「A？」
俺が問いかけると、Aはこちらを向いた。
目はいつもの淡い青に戻っている。
「私、何がしたかったんだろう。キレただけなのに、止まらなくなっちゃった。みんなを殺す所だった。何してるんだろ」
Aはそう言って後ろに倒れた。
そして手を上に伸ばした。
「私は自由が欲しいだけなのに。どんどん遠ざかっていく。なんでだろう。誰よりも努力してるのに」
俺はAの横に腰を下ろした。
「お前一人じゃ、こんなでかい世界はどうにもならねぇってことだ。だから仲間がいるんだろ？」
俺が言うとAは笑い出した。
狂った笑いではない。
「こんな日だったよね。イザベルとファーランを失ったのは。最初に仲間を失ったのは。私はそれを糧に生きてきたのに。それすら忘れちゃった。私、バカだね。もう…もう自分がなんなのかわからない」
Aは起き上がった。
雨で分かりにくいが、Aの目から涙がこぼれた。
「もう分かんない。誰か教えてよ。私は何がしたいんだろ。分かんない。いっそ狂っちゃえばよかったのに」
俺はAを引き寄せて抱きしめた。
Aは驚いて固まっている。
「そんなこと言うな。お前が狂ったら、俺が困るんだ」
Aは小さく笑った。
少しは気が楽になったか？
「ありがと。じゃあ、私を壊して？」
Aがどういう意味で言ったのか、そんなことはどうでも良かった。
ただ本部に全速力で戻った。
そして自らの求めるがままに、事を進めた。
「ありがとう。大好き」
Aはそう言った。
ずっとこんな日常が続けばいい。
ついでに自由がついてこればいいようなものだ。
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作者名：カシオペア | 作成日時：2017年9月16日 8時
