自己中だね、ごめん〈arkt〉 (ページ14)

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ktside

「……………あ、俺男の人役」

普通の役でほっと息を吐いて、
二人の表情をちらっとみると薮くんがぷるぷる震えていた。

…女の人役だったのかな？？

「け、けぇと、男の人役なの？」

薮くんに声をかけようとしたら大ちゃんが俺に話しかけてきた。

「うん。大ちゃんはなんだったの？」

俺の何気ない問いかけに困ったような表情を浮かべて少し視線を落とした後にぼそりと答えた。

「……………………おんな、やく」

…………え、
うそ、大ちゃんが、…相手役？

「あっ…「あぁ！！街人とかまじでいらないだろ！！」

何か言わなきゃ、と思って口を開くと覆いかぶさるように薮くんの嘆き声が重なった。

「圭人、すっげぇいい役じゃん。交代しよ？な？」

俺の肩を組んで羨ましそうに口を尖らせる。
そのあとに薮くんは大ちゃんに視線を送り、
ふにゃふにゃ笑顔で

「あ、でも大ちゃんでもいいよ。ほら、大ちゃんにぴったりだよ、街人」

…という毒を吐いた。
その言葉に大ちゃんはむすっと頬を膨らます。

「ぴったりなわけないだろ！自分が嫌だからって人に擦り付けんな！！」

ぷんすか、という言葉が似合う可愛い怒り方。
身長の大きい薮くんと小さい大ちゃんが話しているのをみていると、なんだか癒やされるなぁ…
微笑ましいってこういうことなんだろうな

…やっぱり俺は大ちゃんのことが好きじゃないんだろうな、ってつくづく思う。
好きだったらきっと嫉妬するし、いますぐにでも引き剥がすんだろう

そういう感情がびっくりするくらい、沸かない

………相変わらずのだめな俺

無意識に手首に爪を立ててぐっと力を込める。

そのあとに、俺の手を誰かが掴んだ。
きょとんとして顔を上げると目をまんまるに開いた大ちゃんがいる。

「け、圭人…血、でちゃうよ、…」

その言葉に視線を下ろすと爪がだいぶ深くまで食い込んでいた。

「………あぁ、ほんとうだ、ごめんね」

大ちゃんの指が、そこに伸びて、でも引いた。

…ずきん、と胸が痛くなる。
俺と大ちゃんが前のような関係じゃない証。
その戸惑った手に自分の手を重ねて、
「大丈夫」と言ってあげて安心させたい。

これも、きっと、自分を正当化したいだけの自己満足な行動。

「服で隠れるし心配しないで」

そんな言葉しかかけてあげられない。
大ちゃんは小さく頷いてから、テレビで見る笑顔で「気をつけろよ」と言った。