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「…………え」
七海「あ、ごめん、嫌だった？」
固まってしまった私を、不安そうな顔で見つめてくる前野さん。
「あ、いや、あの……初めて言われた、」
七海「え？」
「この声、可愛いなんて初めて言われた」
七海「うそ、めっちゃ可愛いのに。女の子っぽくて」
「……ありがとう。ほんとに嬉しい。そんなこと言ってくれて……ありがとう」
思わず泣きそうになってしまう。
七海「え、ううん。どうした？大丈夫？」
「うん、……大丈夫、ただ嬉しかっただけ、」
今まで嫌で嫌でたまらなくて、コンプレックスだったこの声を。
可愛いって言ってくれる人がいるなんて。
前野さんの一言は他の人からしたらちっぽけなことかもしれないけど、私にとってはものすごく大きくて、私の心を救うものだった。
何気ない一言にこんなにも反応してしまった私に、びっくりしながらも「えー泣かないでー」って笑う。
そんな前野さんに、私も涙を流すのではなく笑って「ありがとう」と言った。
.
翔「アリスのデザイン、順調？」
週に一度の、一緒に帰れる日。
翔くんに告白されたあの川まで、ちょっと遠回りしながら帰るこの日が私は好き。
九月半ばで厳しい残暑も別にいいかなと思えるくらい。
今日は途中でアイスを買ったから、川沿いに置かれたベンチで、2人並んで座って食べる。
「うん、いい感じに進んでるよ」
翔「そっか。最近、前野とよく話してるもんね」
「あ……確かにそうかも」
前野さんとは放課後だけじゃなくて、休み時間とかも話したり、一緒にいることが増えた。
翔「俺も来週からは毎日、文化祭の準備手伝えるからさ」
「うん。あ、日曜日の練習試合、智くんも見に行くって」
翔「ほんと？じゃあ、めちゃくちゃ頑張んないと」
「え、なんで？」
翔「いや、そりゃね、かっこ悪いとこ見せらんないでしょ」
「ふふ、そっか。楽しみにしてるね」
そう言うと、翔くんはニッと微笑んだ。
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作者名：さくらこ | 作成日時：2019年6月23日 17時
