第二章 オダマキ ページ7
そこからはまるで抜け殻のように。なにも気力が無くなった藤ヶ谷は生きた死体のようだった。
仕事には行っていたが、バライティでは一切喋らずただ俯いていた。歌の番組ではソロの多い藤ヶ谷はいつものように強くて儚い声ではなく、弱々しく途中途中止まりながらだった。
そんな藤ヶ谷にメンバーは何も言えなかった。ずっと見てることしか。こんな時叱って正しく直してくれる人物は一人しかいなかった。それは北山だった。
メンバーは北山を思い出したのか少し顔を歪めた。唇をぎゅっと噛みしめて、ただ悔しい顔をするだけだった。楽屋は静かで重かった。
ここでも元気づけてくれたのは、北山なのかもしれない。彼がいなくなって初めてわかる。この喪失感と大切感。北山はずっとメンバーを支えてくれていた。リーダーとして。
ずっと、俯いているだけ。本当にこのままでいいのか。これまで北山が積み上げてきたものは何だったんだろうか。ここでキスマイを断ち切ってしまうのか。
その事を一番に思い付いたのはずっと北山の後を追って、しがみついてきた二階堂だった。
2「……みんなこのままでいいと思ってるの?みつが積み上げてきたもの全て水の泡にしちゃうの!?よくないよ。俺は少なくともみつの意思を継ぎたいと思ってる。」
その声に響いたものは多かった。メンバーの目の前には北山が映ったような気がした。
その顔は困ったように笑っていて「もっと頑張れよーw」と言っているように思えた。その瞬間全員の心が震えた。
M「そうだよ!みんな!俺、キタミツを悲しませたくない!」
T「俺も!みつには天国でも笑っていて欲しいな……」
メンバー全員の心が一致したような感覚に襲われ、徐々にみんなの声が大きくなって立ち上がる。だがそこには一つ欠けていた。
Y「……太輔、」
藤ヶ谷はみんなが立ってるのに対して、元北山がよく座っていたいすに座ってうつ伏せていた。
みんなの歓喜の声にも耳を向けず、ただ座っているだけ。そんな藤ヶ谷を見てメンバーは心苦しくなった。
2「……ガヤさん。ガヤさんには目の前にみつが見えなかったの?」
F「……見えるもなにも北山は生きてる」
藤ヶ谷は言い放った。昨日お葬式を行ったはずなのに彼はまだ認めてなかった。受け入れられなかった。
M「……ガヤさん。過去に捕らわれちゃ駄目だよ、」
その時藤ヶ谷は大きく目を見開いた。そして荒々しく立ち上がって宮田をキツく睨み付けた。
その目はクマがあり、闇に堕ちた天使のような目をしていた。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時