ルリタマアザミ ページ38
また時間が止まる。その時にはさっきまで大きく聞こえていた花火の音が、ほぼ雑音と同じぐらいになっていた。
目が合ったことで良い雰囲気が流れる。この空気はキスをしても大丈夫な感じだ。藤ヶ谷はゆっくりと顔を屈める。藤ヶ谷が迫ってきているというのに北山は瞼すらピクリと動かさなかった。ただ反応できていないだけなのだろうか。それとも藤ヶ谷を受け入れたのか分からない。
その間に距離は縮まっていき、上唇が少し触れた。藤ヶ谷の身体は先程のじゃがバターよりも熱を籠めていた。後は下唇に噛みつくだけだった。藤ヶ谷が北山のぷっくりした紅い下唇に噛みつこうとしたとき、北山が動いた。
北山は少し空いている隙間に手に持っていたチョコバナナを突っ込む。今まで藤ヶ谷が急に抱き着いたり、距離を詰めようとしても拒まないでいた北山が、初めて抵抗をしたのだ。藤ヶ谷も驚いてチョコバナナにキスをしながら固まった。
そんな藤ヶ谷を軽く見据えて、北山の目はとても辛そうで冷たかった。その冷淡な目で見つめられた藤ヶ谷の背中に悪寒が走る。
K「……今は駄目。どこだと思ってんだよ、」
責め立てるような、“今は”という意味深な言葉を呟いた北山は、いつの間にか元の目に戻っていて藤ヶ谷から離れる。急に唇から温かみが無くなったことで藤ヶ谷は我に返る。
拒否られた事を理解した藤ヶ谷は今にも泣き出しそうに顔を歪めた。藤ヶ谷の心の中にはショックと失望で溢れかえっていた。普通なら泣き出しそうな藤ヶ谷に寄り添うはずの北山は、そんな藤ヶ谷を目のあたりにして背中を擦る事無くただ辛そうに笑っただけだった。
まるで藤ヶ谷に触れたくないかのように北山は前を向いて歩きだしてしまった。藤ヶ谷は去ってゆく背中を歪む視界の中見つめる事しか出来なかった。
そのまま解散となった祭りはとても後味が悪く、二人を苦しめる羽目となった。藤ヶ谷は少なくとも誘わなければ良かったと思ってしまった。
祭りの日から後日、普通に仕事が始まって嫌でも北山と顔を合わせないといけないため、藤ヶ谷のやる気は地の底まで落ちていた。前は北山に会えるという嬉しさで足取りは軽かったが、今は足取りは重くほぼ靴底を引きづりながら歩いていた。
楽屋の前に着くと渋々ドアノブに手を添えて、重々しく回したドアノブで扉を開ける。その隙間から聞き慣れた声が飛んでくる。その飛び交う声を耳にしただけで、藤ヶ谷はこの今から入る部屋に北山がいないことが分かった。
確認のため、扉を全開にした後部屋を一望する。やはりそこには北山の姿は無かった。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時