第四章 つるバラ ページ35
胸騒ぎとリンクして、周りを歩いている人物達の声が行き来してざわついていた。待ち合わせ場所は祭り会場の近くの駅前で、電車から蒸気の音が鳴り響く。
不安を人並み以上に募らせているのに平然を装い壁に背中を預けているのは、シンプルなあい色に縦しま模様の浴衣を着飾った藤ヶ谷だった。
結局、デートプランは思い付かず不安だけ持ってきた藤ヶ谷は、彼の到着を落ち着かない様子で待つ。実際来てくれるか分からないが、彼なら来てくれると信じて待ち続ける。
けれど待っていても一向にくる気配は無かった。それもそうだろう、藤ヶ谷は集合時間より一時間前から来ていたのだ。藤ヶ谷が待っている間に三十分が過ぎて、残り一時間になった。
流石に早すぎたせいか、藤ヶ谷の足が段々と痛みを帯びてきて、悲痛の声を叫んでいた。このままずっと立ったまま、後一時間待つのは厳しいので息抜きを兼ねて藤ヶ谷はお手洗いに行くことにする。
人混みを華麗に避けてスマートに進んでいく。集合場所の駅から藤ヶ谷の姿が見えなくなった所にぱたぱたと走ってきた小さい背中がそこで足を止めた。
それは北山だった。無防備だった藤ヶ谷に対して北山は青いキャップを深々と被っている。周りを見渡して、藤ヶ谷がいるかどうか確認していないと分かると息を吐いた。
K「流石に早すぎだよな……」
北山は自分に呆れながらもバッチリと黒い色に白いしま模様が入った浴衣を決めて来ていた。その様子から前、藤ヶ谷に指摘された通り北山の方が楽しみにしているように思える。
十分経った頃、さっきまで藤ヶ谷がいた所に同じように背中を預けていた北山の鼻に香ばしい匂いが届く。花火が始まる三十分前なので屋台が開かれたのだ。
屋台のそれぞれのライトは夕日が沈みそうな街を一気に照らした。暗くてあまり目立たなかった、竹にかけられた短冊たちが露になる。
その竹と竹の間には紙衣が吊るされており、その紙衣に付けられた小さなライトも光り出していた。下に陳列されている折鶴の達もそれぞれの光を帯びている。
ライトが一気に点いて、北山は光に囲まれているような気分になり興奮していた。鼻につく匂いが強くなり我慢出来なくなった食いしん坊の彼は、屋台が並ぶ所へ走り去ってしまった。
北山が走り去った反対方向から藤ヶ谷が姿をみせる。彼も北山と同様で幻想的に光るライトにわくわくが止まらなかった。
あっという間に集合時間まで十分を切っていた。時間が経つにつれ、これから北山とのデートが始まるという緊張感に押し寄せられた藤ヶ谷は何となく周りをウロウロする。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時