ウスベニアオイ ページ27
そんな藤ヶ谷に安心したような、けれど物足りないような目で北山はずっと彼を見つめる。その北山を藤ヶ谷は少し瞳を揺らしながら、答えるように再び微笑む。
F「そんな目で見ないでよ。(笑)」
K「……はぁ!?」
その時北山は自分はどんな目で藤ヶ谷を見つめていたのか想像してしまい、顔を赤くする。北山は情緒不安定気味の藤ヶ谷心配してたのにと頬を膨らませる。
藤ヶ谷が落ち着くならと身を委ねていたのに対して藤ヶ谷は、何も知らないような声で自分を煽るような態度に怒りが込み上げた北山は藤ヶ谷の手を振り払う。
F「あっ……」
名残惜しそうにする声を出す藤ヶ谷を横目にジャケットをソファーに少し乱暴に置いた北山は、そのまま荒々しく楽屋を後にした。けれどその前に藤ヶ谷の方を見ずに北山は問う。
K「……落ち着いたかよ、」
F「!……うん。ありがとう。さっきはごめんね、」
K「……ふん、」
あからさまに拗ねる北山は楽屋の扉を後ろの手で閉めようとするとき、「なんで俺のほっぺ摘まんだら落ち着くんだよ」と言い放ち廊下に出て、撮影場所に向かう。
そんな可笑しくて、けれど何とも優しい北山に藤ヶ谷の口から笑いが零れる。それとは裏腹に彼の切り替えの速さに感謝しながら藤ヶ谷は心の中で先程の自分の行動に反省する。
F「……気をつけなきゃ、」
一言呟いて藤ヶ谷は気合いの一発で自分の頬を両手で叩く。頬は赤くなりひりひりと痛みをあげる。その痛みを勲章にして、北山の後に続き藤ヶ谷は楽屋を後にする。
その後の撮影は順調に進んで行った。けれどそう見えてカメラのフラッシュバックを食らう二人の心の中はざわめいていた。
さっきまで、あんなに接近したのに意図して近づくのと無意識に近づくのはこんなに違うのだと思い知らされる藤ヶ谷。
けれどポーカーフェイスを装い、北山と身体に触れて、重なる。いつもの撮影のはずなのに藤ヶ谷にとって特別な日の気分になっていた。
逆に北山はポーカーフェイスを完璧に装う藤ヶ谷に対抗心を抱き、自分自身も彼以上に輝くように努める。
けれどやはり藤北の撮影は女性ファンを筆頭に売れるため、どうしてもあちらの方向のポーズを指示される。彼に触れる度ドギマギする自分に少し苛立った。
最後の一枚で唇が重なるギリギリで止まるポーズを撮る。北山が藤ヶ谷の頬に手を添えて近づく。自然と藤ヶ谷の顔は北山の頭に隠れる。
北山は藤ヶ谷に対する思いを思い浮かべながらカメラを見つめる。北山自身は最高な一枚が撮れた気がした。
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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時