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ナデシコ ページ3

K「……何の話ー」

少し怪訝そうな顔を藤ヶ谷に向けるがすぐ手に視線を戻す。今はみんなの期待の的の藤北の撮影会の待合室だった。

北山は律儀に椅子に座り、他のジャニーズの雑誌に目を通しており、藤ヶ谷はそんな北山と真逆でソファーに寝転びスマホを見ていた。


だが突然体を起こして数秒間北山を見つめていると思うとそんな事を口にした。そんな藤ヶ谷の話を知らんぷりをして適当に返事を返す。

  F「……いや、だからあれから体調治ったの、」

藤ヶ谷はそんな北山の態度に負けず劣らず聞きす。そんな彼をとうとう見向きもしなくなった北山は目の前の事に集中する。

  F「……聞いてるの?」

  K「……だからなんの話かって聞いてるだろ」

  F「いや、そのまんまの意味だし……」

  K「……はいはい。もう治ってますよー」

  F「……嘘つけ」

  K「あ?」

藤ヶ谷の返事に気に障ったのか北山は彼を睨みつける。「俺なにも悪い事言ってねぇし」と言っているような顔で藤ヶ谷も北山を睨む。二人は数秒間見つめ合っていた。

けどその見つめあいを北山は断ち切った。そんな北山に少し物欲しそうにまだ見つめる藤ヶ谷の口が開く。

  F「……まだ元気ないじゃん、」

  K「気のせいじゃね?俺は至って平然だよ」

  F「でも――」

  K「あぁ”もうめんどくせぇな!」

藤ヶ谷のしつこさに今度は北山が痺れを切らし荒々しく席を立つ。そのまま腕を思いっ切り振りながら足音を大きく鳴らして藤ヶ谷との距離を一気に詰める。

そんな北山に驚いて咄嗟に中途半端に手を挙げる。彼はどんどん近くに行った。とうとう藤ヶ谷の目の前に堂々と立った北山は、腰を低くして藤ヶ谷との顔の位置を合わせる。

そして顔を近づける北山に何かを期待した藤ヶ谷は目を閉じた。

  ごチン

まるで漫画の効果音に出てきそうな音が静かな楽屋に鳴り響く。淡い痛みと衝撃で目を開ける藤ヶ谷は至近距離の北山に驚き顔を背ける。

  K「……これで熱が無いと分かっただろ!?」

声を荒げる北山の頬はほんのり赤く染まっていると感じた。その顔を隠すかのようにすぐに北山は元の位置に戻る。その間ほんの数秒間だった。

藤ヶ谷の胸はいっぱいいっぱいになる感覚がした。その後さっきの事で集中力を切らした北山は頭を掻きむしりながら、早々とページを無造作に開いていった。

その時藤ヶ谷はもっと距離を詰めていいと思ったが出来なかった。やはり、藤ヶ谷太輔は意気地なしだった。

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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時

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