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ベゴニア ページ20

北山はただ俯いていて、その目は座っていた。口は少し尖がらせているようにも見える。

その表情は純粋に寂しそうで、犬で特有の「クゥ〜ん」と言う鳴き声が聞こえてきた。

藤ヶ谷はそんな北山を見て顔がこわばる。そのまま彼は言葉を出せず、口をパクパクと動かしていた。北山はそんな藤ヶ谷をほっといて自分の主張をぶつける。

  K「三人で楽しそうに話してるしさ、二階堂と仲良く追いかけっこするし、俺は仲間外れ?」

初めて北山は藤ヶ谷をきちんと見つめる。その目は上目遣いでかすかにうるんでいた。

その技法は女子がよく使うものだ。けれど彼がやると更にたちが悪い。

藤ヶ谷もその可愛い姿を魅了され、恥じらいで北山がいる方向と逆の方を向く。それを北山は拒否られていると解釈してしまい、ショックを受けていた。

もうここにいたくないのか北山は二階堂と千賀が向かったお手洗いの方に足を動かす。その足音に気が付いた藤ヶ谷は慌てて北山の腕を掴み止める。

北山はその行動に驚きもせず、拒まず、けど藤ヶ谷の方は一切見なかった。そんな反応をされた藤ヶ谷の目には、不安が募る。

時が止まっているように二人は動かず、口も開かなかった。

けれど北山を無理矢理止めたのに自分から話さないのは、申し訳ないと思ったのか姿勢を直し、北山に向きなおす。

  F「……ごめん。そんなつもりはなかった。」

一つの謝罪が零れた。その響きが空気に漂い、反響しているように聞こえる。

北山はそんな謝罪にも動じず、ただ前を見つめていた。

藤ヶ谷からはその表情は見えない。ただ言葉を途切らせてはいけないと思った。

北山からの返事は無いけれど、こちらを向いてもらえるように。言葉を並べた。

  F「俺がここに来ようと決めたのは、北山がいるからって聞いたからだよ……」

  K「……なんで、」

藤ヶ谷の方は向いてくれなかったが、返事だけは返してくれた。それに安堵した藤ヶ谷は正直な事を言おうとした。

  F「……だって、俺は北山の事……」

その言葉は途中で終わった。続きを言おうとしたところで藤ヶ谷の口は閉じる。

不思議に思ったのか北山は後ろを振り返る。その目は藤ヶ谷と同様で不安に満ち溢れていた。

けれど一向に藤ヶ谷は口を開けようとしなかった。それは、「好き」と言おうとした彼に感情の重みが一気に押し寄せたからだ。

感情に押しつぶされそうな顔つきになっていた藤ヶ谷を見て、北山は心配そうにしていた。

ここで気持ちを伝えて、振られたらどうなるんだ?

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作者名:supia | 作成日時:2021年9月23日 1時

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