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姉ちゃんが三十四人 ページ38

「Aの部屋はこちらでーす」


 案内された部屋の前に立ち、誰かが扉を開けるのを待つ。
 ウェディングドレス姿の姉ちゃんが、この向こうにはいるんだ。 精一杯、考えてみたけど、結局実物が一番愛らしいに決まってる。
 深呼吸をした兄ちゃんが、コンコンと扉を叩く。


「はっ……、どうぞ!」


 姉ちゃんの声が、中から聞こえた。
 高そうなドアノブを白い手袋で包まれたその手で兄ちゃんがゆっくり回す。
 扉が開き、一歩中に入れば姉ちゃんは女神のような微笑みをたたえながら、こちらを見つめていた。
 視線が俺達の頭の先からつま先まで何度か往復した後、「わぁぁ!」と感嘆の声を上げ、顔をぱあっと明るくする。


「三人ともすっごい似合ってる! カッコイイね!」


 ドレスの裾を持ち上げ、こっちに駆け寄る姉ちゃん。
 キラキラと眩しい笑顔を、惜しげも無く俺達に降り注ぐ。
 ヤバい、いつも以上に綺麗だ。 涙が出てきそう。


「じゃ、撮影しようねー! こっちこっち!」

 チビ……いや、『乱数さん』がぴょんぴょんと跳ねながら移動し始める。
 このドレスは彼デザインだと言うし、俺らが姉ちゃんの隣に結婚式の衣装で立てるのも彼のお陰なんだ。
 こっそり心の中で拝んでいると、姉ちゃんが俺の隣にすっと寄ってきた。


「二郎、すっごく似合ってるよ」

「あ、や……、姉ちゃんも、すっげぇ、綺麗」


 姉ちゃんはありがとう、と微笑み、次いで三郎のとこに駆け寄っている。
 ふと兄ちゃんを見ると、ぽけーっと意識が飛んでいた。
 「兄ちゃん」と声をかけると、はっと我を取り戻し、「二郎」と力が抜けたような柔らかい笑みを浮かべた。


「ねーちゃんにかっこいいって言われちまった……」


 にへらーっと、頬が緩んでいるのに、それさえも絵になる兄ちゃんは、やっぱりかっこいい。
 姉ちゃんに褒められて顔を赤くする三郎を見ながら、兄ちゃんは幸せそうに笑ってる。


「なぁ、二郎」

「ん? なぁに、兄ちゃん」

「……ねーちゃんのこと、どう思ってる?」


 どくん、と心臓が高鳴った。
 知ってる、兄ちゃんの気持ちも。
 俺の気持ちも三郎の気持ちも分かってる。
 兄ちゃんを見ると、兄ちゃんは姉ちゃんを見ていた。
 その眼差しは、どこか諦めたような、寂しい愛で満ちている。


「……好きだよ、ガチで」

「そっか、」


 兄ちゃんは満足そうに微笑むと、「ねーちゃん!」と言いながら駆け寄る。
 どこか薄っぺらい幸せな光景は、俺にとって泣きそうなくらい寂しかった。

オネーさんがさんじゅーごにん→←オネーさんがさんじゅーさんにん



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おりはるこん(改名)(プロフ) - ミーさん» コメ返し遅れて申し訳ないです!最近やることが多いので更新事態の優先順位が低くなってるのがすごく悔しくて…。終わりは決まってるので着いてきていただけると嬉しいです! (2018年11月29日 20時) (レス) id: ea4c86eaca (このIDを非表示/違反報告)
ミー(プロフ) - 最近読み始めたので、更新とても嬉しいです…!これからも頑張ってください! (2018年11月9日 20時) (携帯から) (レス) id: 750b1e0df3 (このIDを非表示/違反報告)
おりはるこん(改名)(プロフ) - ぬぬぬさん» ここだと文字数が足りないのでボードかメッセージに移行してもよろしいでしょうか?私の考察は250文字以上になってしまいそうなので…(汗) (2018年9月15日 18時) (レス) id: ea4c86eaca (このIDを非表示/違反報告)
ぬぬぬ(プロフ) - ペンは剣よりヒプノシスマイクってどういう意味だと思いますか???調べても全然分からなくて… (2018年9月15日 17時) (レス) id: 62aeac2e51 (このIDを非表示/違反報告)
おりはるこん(改名)(プロフ) - ぬぬぬさん» わかりみが深い…!久々にヒプマイを誰かと語れてスッキリしました!ぽっせもわかります!ヒプマイ沼は深いですね…! (2018年9月15日 17時) (レス) id: ea4c86eaca (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:おりはるこん(元鈴音) | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2018年8月26日 8時

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