episode*6 ページ9
ヒグーマとの距離はだんだん縮まっている。
もう、その差は5メートルくらい。絶望だ。死ぬ、死ぬ、死ぬ。
男も冷や汗を垂らしている。策は無いようだ。
このままじゃ、私も男もヒグーマに追い付かれて、内臓曝け出しエンドだ。
ーー戦うしかない
そんな考えが過った。
出来る。私なら出来る。中級魔法を全て使える私なら。
それが凄いのか普通なのか、世間知らずな姫様の私には分からないけれど。
でも、中級魔法を全て使えるようになるまで10年、努力はしてきた。
それに、やるしか無いのは確かだ。
私は、私の手を引く男の手を振り払った。
そして、ヒグーマと対峙する。
「ガァァァァァァァアアア！！」
『っ…』
「おい！何してんだ！」
勢いで対峙したものの、あまりの凶悪さに私は怖気づいた。
目は赤く、体毛も真っ黒で、鋭利な爪は長く、大きさは私の身長160cmの三倍くらいある。
一言で言うと、化け物だ。
でもやるしか無い。逃げても仕方ない。
私は強い目で、ヒグーマを見返した。
そして、真っ直ぐに右腕を前に伸ばし、手のひらをヒグーマに向けた。
『�狆弖眦杜�(インパルス)�瓠�』
バチィ！！
「アア！！！？」
一瞬、ヒグーマの体を黄色の電気が駆け巡り、途端、ヒグーマが倒れる。
が、致命傷にはならず、すぐ起き上がった。
くそ…中級魔法の中ではなかなかの威力なんだが。
火系魔法の方が威力はあるが、ここは森の中だから使え無い。
さて、どうしたものか。インパルスで力押しか？
私は少し戦略を考えた。しかし、それがダメだった。
「ガァァァァァァァアアア！！！！！！！」
もたもたしている間に、攻撃に怒ったヒグーマが襲いかかってきた。速い。魔法を出す時間が無い…！
私のゼロ距離に来たヒグーマはその鋭利な爪で私を攻撃しようとしてくる。私はギュッと目をつむった。
．
．
ーーザシュッ
．
．
「ハァ、大丈夫か…？」
覚悟していた痛みは襲ってこなかった。
その代わり、ため息混じりの甘く優しい声が聞こえてきた。
さっき手を引いてくれた、男の声だ。
私は目を開けた。
そこには、背を向けた、私と同じ12歳くらいの少年がいた。
少年は、ヒグーマを剣で貫きながら、振り向いて、呆れたように、安心させるように、微笑んだ。
―――心が、鳴った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 287人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「転生トリップ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
むっふぃ〜(プロフ) - ユーホニア大森林が来た時点で私は確信してしまった．．．この作者なら仲良くできｒ(((とても面白いです！これからも更新頑張ってください！！ (2018年9月9日 16時) (
レス) id: 3afe744d97 (このIDを非表示/違反報告)
漆黒の羽(プロフ) - 初音さん» 本当ですね(;ﾟДﾟ) ご報告感謝です (2017年9月2日 20時) (レス) id: ab31b519ce (このIDを非表示/違反報告)
初音 - 28の、「76時間耐久激痛」のとこ、丸3日間なら「72時間耐久激痛」ですよ！ (2017年8月14日 23時) (レス) id: c5530373f4 (このIDを非表示/違反報告)
漆黒の羽(プロフ) - のんいろ。(レオンさん» コメントありがとうございます。お察しの通りです（笑）ぼちぼちですが更新頑張ります(*'ω'*) (2017年3月1日 19時) (レス) id: 19bb651143 (このIDを非表示/違反報告)
のんいろ。(レオン(プロフ) - クラ…サクッス…ユーホニア…あっ(ストーリーが私の好みすぎて続きが気になってしかたないです…！更新頑張ってください！！ (2017年2月20日 17時) (レス) id: 98639aa88e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：漆黒の羽 | 作成日時：2015年12月18日 18時
