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ごめんなさい ページ40

Aside


「私も、ごめんなさい」


沖田隊長の傍に歩み寄って、キツくキツく、今にも赤色が彼の強い手のひらに滲んでしまいそうなくらいに握り締められている両手を取って、私はそう言った。私は彼のことを見つめていて、先程まで顔をうつむかせていた彼も、今では私のことを見つめてくれている。彼は、いつも。私のことを心から想ってくれているときはいつも、切実で不安げな目をゆらゆらと揺らして私を見る。いつもは飄々としていて、ふてぶてしくて、色んなことがめんどくさそうで、余裕ありげな表情をしているのに、今はその面影すら見当たらなくて、その目と表情を見て、私の胸はギュウッと握り潰されているみたいに締め付けられる。泣き出しそうになる。既にもう目頭が熱を持っていて、痛かった。

けれど、泣かない。だって、今は、沖田隊長の方が泣きそうな顔をしているから。ここで二人とも泣いてしまったら、収集がつかなくなってしまうから。溢れ出しそうな涙を引っ込めて、私はまた、「ごめんなさい」と呟く。沖田隊長は、その目に更に困惑の色を織り混ぜた。彼の手の指先が、痙攣したように一度、ぴくんと動いた。

そうして沖田隊長は恐る恐る口を開く。恐る恐るなんて、彼にはとても似合わない表現だけれど、本当にそんな感じで。


「…なんで、お前が謝るんでィ」


お前が謝ることなんて何も、と。彼は言う。その声は震えている。その声にまた、私の胸は痛みを帯びる。


…彼の言葉に、私は首を横に振る。


「私も、貴方と同じです」

「…何が…」


「…私も、貴方のことをちゃんと見ていなかった」


…沖田隊長は、こんなにも苦しそうな顔を私に見せるほどに自分を追い詰めていた。私に謝罪なんてしてしまうくらいに、葛藤を背負っていた。私は彼がこうして話をしてくれるまで、彼がどれほど苦しいのか、どれほど追い詰められているのか、気付くことが出来なかったのだ。

どうして気付けなかったのだろう。私は彼の、一番近くにいつも居たはずなのに。どうして、と、考えて、すぐに答えは出た。とても簡単な答えだった。


私は、私のことで精一杯で、自分の意思を彼に伝えることに精一杯で、それしか見ていなかったのだと。


「私は、貴方に認めてもらおう、貴方の隣に立てるくらいに強くなろうと自分のことばかりを見つめていたから……何も気付けていなかったのです」


彼は私が傷付くことを恐れている。だから戦場には立たせたくはないと思っている。そんな表面的なことばかりを考えて、その奥にある彼の気持ちを、見つけることが出来なかった。

彼と同じ→←怯える権利なんて 沖田side



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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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