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願いを ページ31

…彼が自身の腹の護りを捨てたのは。それを疎かにしたのは、すべてフェイクだったのだ。私がそれを見て、彼のお腹に竹刀を向けるように仕組んだのだ。彼の思惑通り、私はまんまとそれを彼が不意に見せた隙だと信じて竹刀を振るい、それは彼の予想した通りの軌道を描いて、予め私の動きを読んでいた彼は、スムーズに私の一撃を止めては、私の竹刀を弾き飛ばした。なんであの時にすぐに、彼のフェイクに気付けなかったのだろう。気付けたはずだったのに。気付けるだけの彼の実力を、私は知っていたはずなのに。彼がそんな凡ミスを侵すなんてことは、あるはずがないのに。勝つことに執着しすぎて、勝利ばかりを見つめすぎていて、そんなことにも気付けなかった。なんて馬鹿なのだろう。立ち尽くしながら、そんなことばかりをぐるぐると考えた。

勝てるだなんて、本気で思っていた訳じゃなかった。けれど、彼から勝ちを取らないと。取るつもりで掛からないと、彼には勝てないと思った。そして、あの瞬間。愚かだとしか言いようがない私は、勝ったと思った。けれど、負けた。やっぱり私は、まだまだ全然弱いのだ。彼にはやはり、敵わなかった。

私は負けてしまったから、私のお願いを彼に聞き入れて貰うことは出来なくなってしまった。勝ったら私の願いを叶えてくれる。私が出したその彼に対するリスクは、私の稚拙な判断によって破綻してしまった。それでも、私は言うべきなのだ。彼に自分の気持ちを。けれど。


「んで、俺の願いを叶えてもらうんだっけか?」


自分が負けたことを私が戦いの余韻を感じながらに理解していれば。そうして彼に言うべき言葉を並べていれば、彼は一足先に口を開いた。それに、私は、悔しさを奥歯で噛み砕きながら、ゆっくりと頷いた。


「私が、言い出したことなので」


『俺が勝ったら、俺の願いをお前が叶えてくれるんだねィ?』


私が勝ったら、私の願いを彼に叶えてもらう。
彼が勝ったら、彼の願いを私が叶える。

そういう条件を持って、私達は剣を交えていた。今更取り消すだなんて情けないことは出来ないし、するつもりもない。

彼は「んー、どうすっかなァ」と。何を私にお願いするのか考えているような素振りを見せた。けれど、もう既に願いを決めているようにも見える。

そして彼は、すぐに私を見据える。何を言われるのか想像もつかないけれど、私が持ち出したことなのだから、受け入れるしかない。私はその目を見返しては、身構えた。


そして沖田隊長は、告げる。




「…決めた。俺のこと、護ってくれよ」


「──え、」


薄く笑って、そう言った。

見くびっていた 沖田side→←まいりました



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設定タグ:銀魂 , 沖田総悟   
作品ジャンル:アニメ
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樹里 - 今回も陽太くんかっわいいっ!!うちの弟もこうだったらなぁ〜 あと、全然関係ないんですけど、名探偵コナンに沖田総司っていう人が出ててめっちゃびっくりしました。ちょっとパクられたような気がしたんで、ソッコーでコレ読みました(笑) (2018年10月7日 18時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 樹里(元茉莉華)さん» 樹里さん!お久し振りです!コメントありがとうございます!いい感じのところですね〜私もここらへんは苦戦しつつも書けるときはとことん楽しんでいたので、うまいこと盛り上げられたらいいなと思います!着実に成長していく二人をお見のがしなく!(笑)頑張ります! (2018年9月26日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
樹里(元茉莉華) - ピピコさんお久しぶりです! なんかいい感じのとこですねっ!! 更新楽しみにしてます! (2018年9月25日 17時) (レス) id: c11197eaa9 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - ヒタキさん» ヒタキさん!初めまして!ありがとうございます!いっぱい読んでださってるんですね…!すごく嬉しいです!何度も読み返してもらえるようないいお話が書けていたらいいなと思います!これからもドキドキワクワクして貰えるように頑張っていきます!! (2018年9月6日 23時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
ヒタキ - こんばんは!初コメさせていただきました。ピピコさんのこの小説本当に大好きで何回も読ませてもらっています!!いつもドキドキワクワクです。これからも応援しています^^ (2018年9月6日 23時) (レス) id: 130f1442ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/  
作成日時:2018年6月15日 19時

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